特別な日 6

1/1
前へ
/31ページ
次へ

特別な日 6

「うん。あたしもね、強くなりたいなぁって、思ってたところなの」 「ルシカ……?」 「でも、忙しくてここ数日全然会えなかったのに、あたしが夜遅くまでやってるって、よくわかったね。もしかしたらどこかですれ違っちゃって、あたし、気づかなかったのかな。だとしたら、ごめんね」  心配してくれる友人がいるっていうのは、すごく嬉しい――心の内でつぶやき、ルシカは花開くような笑顔になった。幼い頃よりずっとヴァンドーナの私邸で勉強と修行ばかりの日々を送っていたルシカにとって、双子の王子との友情は、何よりも大切な絆なのだ。 「あ、う、いや、ルシカがどうこうじゃないんだ。俺が勝手に」 「ふふ。心配してくれて、ありがとうね、テロン」  ルシカがこの上もなく嬉しそうな笑顔を向けたので、すっかり硬直して口をぱくぱくさせていたテロンだったが、背後から力任せにひと突きされて前方によろめいた。ルシカと危うくぶつかりそうになり、焦って無理に身を捻り、さらに均衡を失ってしまう。  それでも何とか体勢を立て直し、憮然とした表情で背後に歩み寄っていたもうひとりの青年を振り返った。 「よッ、おはよう。我が弟よ。おはよう、宮廷魔導士さん」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加