特別な日 7

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特別な日 7

 クルーガーは片手を挙げて挨拶すると、おもむろに典雅(てんが)な仕草で一礼し、次いでひざまずくように長身を(かが)めた。ルシカの手を取り、その指先に触れるように唇をつける。青い瞳に容赦のない微笑と力を籠めて、真っ直ぐにルシカのオレンジ色の瞳を見つめた。 「今朝もご機嫌麗しゅう――どうかな? 腕をお貸ししますので、いまから俺と一緒に中庭の散策など」 「……兄貴」  ルシカの傍に立っていたテロンが不機嫌そうに口の端を曲げ、腕を組んで双子の兄の顔を睨みつけた。彼にこの表情をさせるのは、世界広しといえどもクルーガーだけである。 「例のこと、忘れてるんじゃないだろうな」 「まさか。俺は俺なりに解決しようとしているのさ。それに、可愛いレディにひととおりの朝の挨拶をしただけさ」  クルーガーは流れる金の髪を背に放るようにして立ち上がり、背筋を伸ばした。  悪びれたところのない兄の(いら)えにテロンは、はぁ、とため息をつき、自分の額に手を当てた。冗談交じりの兄の言動にすっかりあきれてしまったらしい。眼を閉じ、開いてからルシカに向けて真剣な面持ちで尋ねる。 「あ、あのさ、ルシカ。読みたい本とか、食べたいものとか……あるかな? 欲しいものとかあれば教えてくれないか」 「……へ? どうしたの急に」
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