特別な日 8

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特別な日 8

 きょとんとした表情で動きを止めたルシカであったが、すぐに唇に指を当てて瞳を天に向け、真剣に考え込んだ。  育った環境が特殊だったこともあり、物欲に旺盛なわけでもない。宮廷魔導士に就任してすぐということもあり、自分の読みたい本など開く暇さえない。そんな時間があるなら、魔導書の解読のひとつでもやっておいたほうが効率的だ。しかもそれはルシカにとって充実した時間でもあるのだ。欲しいというなら――あえて何もない、ゆっくりできる時間くらいだろうか。 「うぅーん……読みたいもの食べたいもの、特にないなぁ。最近はゆっくりと味わえていないけど、ここへ来てから自分で作ることもなく毎日おいしい食事ができて、幸せなくらいだし」 「毎日忙しそうなのは見ていてわかるぞ。たまにはゆっくり休んだらどうだ」  的を射たクルーガーの言葉に、ルシカは()せかけ、すべらかな頬を膨らませた。 「休んでいるわけにはいかないわよ。今までおじいちゃん以外魔導書を読めるひとがいなかったから、たくさん分類待ちになっているし、今日も周辺の都市からいっぱい届くみたいだから」  それに、昨夜から『時空間』の大魔導士である祖父は留守なのであった。いま王宮に、魔導士はルシカひとりなのである。 「そうか……それでも無理すんなよ。顔色も良くないし、そのうちゾンビーみたいな顔になっちまうぞ」
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