久しぶり

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 この文章が届いた時、あなたは何をしているでしょう? 仕事をしているかな? それともお休みで、家でゴロゴロしているのかな? と言いながらも、分かってるの、私。今日はお休みなんだね。  お休みだったら、家でゴロゴロなんかしてないで外に出かけた方がいいと思う。だって、こんなにあたたかくて心地いいのに、もったいないじゃない。もう、本当に出無精なんだから。  でも、以前に比べて外出するようになったね。やっと外に出るようになったなぁって、思ってたの。あなたを外に出すの、結構大変だったの思い出すなぁ。  前に外の空気が気持ち良い。そう言ってた事、覚えてる? あれ、結構嬉しかった。なんか私、あなたの力になれた気がしたから。  その時期から洋服もよく買いに行ったね。結構、おしゃれに変わっていく姿が、見ていて嬉しかったんだ。  映画館に行ったことも覚えてる? あなた、3D映画見ながら手足いっぱいに動いていた。子供みたいにはしゃぐ姿が、かわいかった。  こうして文章を書いていると、あなたと過ごした時間がたくさん蘇ってきます。思い出が沢山あったなぁって。大きな口でパンをほうばる姿。いつも美味しそうに食べてたよね。寝る時は、右を向いて寝る癖。仰向けが苦手みたいだね。お風呂上がりはコンタクトを外して、眼鏡をかけている姿。結構ドキドキしてた。そんな色んなあなたの姿が、ずっと忘れられない。  そんなあなたの姿が見られなくなったことが、寂しかった。どうして何も言わずに引っ越ししたの? 私、本当に寂しかったんだよ。せめて、さよならくらい言って欲しかったな。  ずっと考えてたの。どうしてあなたが、何も言わずに私から離れていったのか。もしかして、私がまだ勝手に覗いてたから? それはだってさ、あなたが何をしているか気になるでしょ? 知ってると思うけど、私、気になると気が済むまで探りたくなるんだ。  嘘だと思う? 思わないよね。だって、あなたが知らないと思ってる事、私、結構知ってるでしょ? でも、それは悪いと思ってる。でも、聞いて。それは、ずっとあなたの事を感じていたかったの。それって、悪い事じゃないでしょ? 私はあなたが好きなんだから、しょうがないじゃん。やっと見つけた王子様だよ。ここを簡単に見過ごす事なんてできるわけないでしょ。あなたは気付いていないと思うけど、私、声も聞いていたの。実は気付いてたりする? まっ、それはないか。  あなたの声、今でもずっと聞いているの。それだけが生きている救いになっているから。あなたと完全に離れてしまったら、おかしくなってたと思う。一時期だけど、その声までもが聴けなかった時は、本当に気が狂いそうになった。だから、ずっと電波を拾えるまであなたの事を探した。必死に探し回ったんだから。こんな私のこと、ちょっとは褒めてよね。    今はずっとあなたの声が聞けて嬉しい。生活音だけでもあなたを感じるの。私、ヤバイかな? そうだ。ここで、嬉しいお知らせ。実は、私も近くまで引っ越してきたの。私、あなたの近くにいるんだよ。  どうやって声を聞いているか知りたい? ふふっ。教えない。だって、あなたは私から離れようとするでしょ?   またいつか、ちゃんとカメラを取り付けないとね。あなたの姿、もっと見ていたいから。今は、SNSの写真だけで我慢我慢。だけどやっぱり、少し物足りないかな。  私が何が言いたいかわかる? 結局あなたは、私から逃げる事ができないんだよ。だって、こうしてあなたの居場所をちゃんと見つけたでしょ? それが確たる証拠。私は、あなたはずっと私のものだと思っているから。  あなたは沢山笑っている。私が見ていたあなたの姿が沢山写っている。私、ずっと見ているんだ。この写真やデータは、誰にも渡さない。あなたもこれから、色んな顔をSNSに載せてよね。  私は、これからもあなたを追いかけていきます。あなたの近くに、私はずっといますから。
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