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 (かける)に初めて出会ったのは、オレが漁の仕事を終えて、(おか)に上がった時のことだった。  オレは早朝から午前中の間は漁船に乗り、午後になると、海沿いの一角で営む食堂『みうら』の店主になる。  新鮮な海鮮料理を提供する、ほんの小さな店だ。漁師仲間のタクや、その奥さんのマナちゃんにも、時々手伝ってもらいながら切り盛りしている。 『地元漁師が営む店』というのがウリでやっていて、実際に漁の都合もあるから、不定休だし、開店時間は昼の12時から夕方18時までだ。観光客も少ない寂れた町だが、お客さんはそれなりに着いてくれている。なんともありがたいことだ。  その日は、よく晴れた初夏の日だった。  汗や潮風でベタつく頬をタオルで拭いながら、オレは店の鍵を開けて、通りに出た。『もう夏なんだなぁ』なんて呑気に思いながら空を見上げると、想像以上に太陽が眩しくて、クラッときた。  慌てて軒下に入り、出入り口にのれんを出し始めた――丁度その時、遠くの方から近付いてくるエンジンの音が聞こえた。  何気なく顔を向けた。人通りも車の通りも殆ど無い、閑散とした道路の向こうから走って来たのは、一台の黒いバイクだった。  バイクはへろへろと頼りなくスピードを落としながら、路肩に止まった。オレの店のすぐ目の前のあたりだ。
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