320人が本棚に入れています
本棚に追加
その、ぬるりとした独特の流線型を見て、オレはハッとした。
――隼だ。
それがこのバイクに付けられた名だ。
時速300キロ以上の速度で飛ぶ、ハヤブサという鳥がいるだろう。まるであの鳥のような動力性能を持つマシンで、最高速度はやはり時速300キロを超えるという。
もちろんそこまでのスピードを、公道で出す機会なんて無いが、それだけのスペックを持つ大型バイクなのだ。人気の車種だからというのもあるが、オレには隼にちょっとした縁があったから、このバイクの事はよく知っていた。
それにしても、止まる直前の様子が、なにやらおかしな挙動に見えた。気になって眺めていると、ライダーがサイドスタンドを立てて、バイクから降りた。
オレは思わず、日差しの下に半分身を乗り出して、声をかけていた。
「おい、故障か?」
「チェーンが切れたみたいです!」
ライダーはオレの方を振り返って、大きな声で答えると、派手な柄の入ったフルフェイスのヘルメットを脱いだ。
ヘルメットの下の素顔は、意外にも若かった。
原宿や渋谷で流行のスイーツでも食ってるのが似合いそうな、いかにも今時の若者といった感じの青年――それが翔の、第一印象だった。
最初のコメントを投稿しよう!