2/6
前へ
/44ページ
次へ
 その、ぬるりとした独特の流線型を見て、オレはハッとした。  ――(はやぶさ)だ。  それがこのバイクに付けられた名だ。  時速300キロ以上の速度で飛ぶ、ハヤブサという鳥がいるだろう。まるであの鳥のような動力性能を持つマシンで、最高速度はやはり時速300キロを超えるという。  もちろんそこまでのスピードを、公道で出す機会なんて無いが、それだけのスペックを持つ大型バイクなのだ。人気の車種だからというのもあるが、オレには隼にちょっとした縁があったから、このバイクの事はよく知っていた。  それにしても、止まる直前の様子が、なにやらおかしな挙動に見えた。気になって眺めていると、ライダーがサイドスタンドを立てて、バイクから降りた。  オレは思わず、日差しの下に半分身を乗り出して、声をかけていた。 「おい、故障か?」 「チェーンが切れたみたいです!」  ライダーはオレの方を振り返って、大きな声で答えると、派手な柄の入ったフルフェイスのヘルメットを脱いだ。  ヘルメットの下の素顔は、意外にも若かった。  原宿や渋谷で流行(はやり)のスイーツでも食ってるのが似合いそうな、いかにも今時の若者といった感じの青年――それが翔の、第一印象だった。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

320人が本棚に入れています
本棚に追加