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「週末、ダブルデートするらしいけど聞いた?」  後処理を終えた蓮は立ち上がって、疲労困憊でだらりと横になる雅に視線を寄越す。  あぁ、と頷くと、何故か蓮は鼻で笑った。 「泊まりって事も?」 「え、泊まりなのか? どこに」 「俺の親父の別荘」 「ふーん……」  彼女からその話を聞いたのはほんの二、三日前だった。  蓮カップルと雅カップルは、彼女同士も友人なため度々ダブルデートはしてきたが、泊まりがけは初めてだ。  深く考えていなかった雅には、悠然とベッドに腰掛けてきた蓮の、この薄ら笑いの意味が分からなかった。 「なんでニヤけてんだよ、蓮。 そんな楽しみなのか?」 「いや、お前ほんと何も考えてねぇんだなと思って」 「どういう意味だよ!」 「夜は別々に寝る事になんだろ。 俺の部屋からいかがわしい声が聞こえても知らねぇからな」 「あ、あぁ……そういう事…」  泊まりで、しかも雰囲気のある別荘で一夜を明かすとなると、若い男女のカップルの夜の過ごし方など容易に想像がつく。  ……と、ここまで言われて、雅はハッとした。  これまでなるべく考えないようにしてきた、蓮とその彼女との行為の音が別室とはいえ漏れ聞こえてくる可能性があるという事に、今さら気が付いて眉間に皺を寄せた。 「いいんだろ。 俺は「いつも通り」ミホを抱くけど」 「い、いつも通り…な」 「雅、お前はどうすんの」 「どうするって…そりゃ俺も……」 「楽しみだな」 「……………そうだな」  今の今まで雅の体を弄んでいた立派な体躯が、違う体を愛す想像などしたくなかった。  蓮は雅の激しい嫉妬心に気付いていて、わざわざ煽るような事を言っているのだ。  半年前に蓮から押し倒されて以来、雅は何かと理由を付けて彼女を抱いていない。  抱けるはずが無かった。  貫かれる喜びを知ってしまい、相手が他ならぬ蓮からの愛撫となれば、本当の快楽を知った雅には好きでもない女とのセックスなど少しも昂る要素はない。  それでも彼女と別れないのは、雅の意地だった。  蓮こそが観念して雅を選べばいいのに、それをしないから雅も素直になれない。  押し倒される前から、ふざけてキスをしたりはよくあった。  ただそれが普通じゃないと知って、途端に意識し始めた矢先に蓮に恋心を見抜かれた。 『俺に抱いてほしそうな顔してんな』  うっそりと微笑んで組み敷いてきた蓮に、何も言い返せなかった雅の負けであった。  けれど本心は、簡単には言ってやらない。  蓮がその気なら、雅も共に闇に堕ちてやる。  そうする事でしか、蓮を繋ぎ止めておく方法が見付からなかった。  本当はすぐにでも彼女と別れてほしいと願っているのに、雅はそれさえ言えない意気地無しだ。  分かっているのに。  お互いの気持ちだけは間違いなく通い合っていると、それだけは分かっているのに……。
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