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30分後。
盛大なくしゃみを炸裂させた俺はパンツ1丁の姿で事務所のパイプ椅子に座りながらマフラーを落とした青森県の石沢みよ子ちゃんへと送る手紙をしたためる為に筆を取る。
「いやー、驚いたよ。脚立を持って戻ったら岡島君が噴水で犬神家やってんだもん」
肩からハンドタオルを下げた俺の半裸姿を見て吉沢班長は面白そうににやけていた。
「別にやりたくてやったわけじゃないっすよ」
「さっき本部に連絡入れたら替えの作業着届けてくれるって言ってたからもう少し待ってね」
「……ありがとうございます」
やっぱり丸い字を書くのは苦手だ。何が悲しくて30手前の男が自分の事を妖精だなんてのたまう手紙を書かなきゃならんのか。
「あの、班長。手紙の字って絶対可愛くしなきゃ駄目なんですか」
「うん。もちろん」
「子供の夢を守る為?」
「解ってるじゃないか。達筆な妖精なんてあまりにも夢がないからね」
満足げに頷く班長。俺はその笑顔を前にどこか疎外感を感じてしまう。
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