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「俺にもこんな頃があったなぁー」
俺は、新人だった頃の自分を脳裏に浮かべる。
『え、これ俺宛ですか!?』
初めて、ファンレターを所属していた事務所の社長から受け取ったのは、養成所に通いながら小さな仕事を少しずつさせてもらっていた頃。
『そう。嬉しいよね。俺は初めてもらったファンレターをいつも仕事に持っていってたよ』
『めっちゃ嬉しいです!』
俺も社長と同じく、仕事で使う手帳にはさめて辛いことがあった時はその手紙を読んで奮起していた。
新人の頃なんて、本当に出してもらえる作品なんて少なくて、まして養成所に通っている準所属の俺なんて、エンドロールに名前すら出ないことも多い。
モブで名前のない役や、名前があってもほとんどモブだった俺にファンレターがくるなんて奇跡でしかなかった。
『神田さん、こんにちは。大好きです!』
まだまだ有名には程遠い頃に出ていたアニメのグッズお渡し会に参加したときに、緊張しているような震える声でそう言ってきた女性。
『あたし、神田さんの声すっごい好きで!初めて聞いたときに一目惚れ.......いや見てないか、一声惚れしました!』
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