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旧校舎の怪
「ねぇ。やっぱり止めておいた方がよかったかな? 黒猫塚君」
「あのねえ。可憐ちゃんがどうしてもって言うから付き添ってるんだよ? それに――苗字じゃなくて、名前で呼んでくれってあれほど……」
「ご、ごめん白猫君。じゃあね、わたしの事も苗字じゃなくて、咲って呼んでね?」
「……わかったよ」
ぼくと咲ちゃんは今、神山高校2年生。ここは、神山高校裏手にある旧校舎だ。
何故ぼくたち2人がこの旧校舎にいるか――それは、ある噂を、好奇心の塊である咲ちゃんが聞いてしまったからだ。
咲ちゃんが聞いた噂はこうだ。
最近、旧校舎前に行くと、玄関前でナニかが手招きをしている。
これを聞いてわかると思うが、玄関前で手招きをしているナニかを見るだけなら、旧校舎内に入る必要性はない。
しかし、放課後旧校舎前に着いた時、そのナニかはいなかった。
まあ、ただの噂なのだからやっぱりいなかったで帰ればよかったのだけれど、好奇心の権化である咲ちゃんは納得するはずもなく――結局旧校舎の中。
しかも、2階に来ている。外観もそうだが校舎内は木製で、外装よりもっと傷んでいる。
床も所々に穴が開いており、歩くたびに軋む音が聞こえる。
吹き抜ける風の音が気味の悪い音を立て、更に恐怖心を煽る。
ふと、ガラス戸から見える外に目が向く。
もう、日が暮れそうな空と太陽に、より赤みが増した――そんな時刻。
ぼくは、夕方が嫌いだ。体が重くなるから。
こういう時間帯をなんて言うんだっけ? そう、確か――逢魔ヶ刻。
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