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◆
「うぅ」
咲ちゃんは、ぼくの腕を掴みながら、このおどろおどろしい状況に恐怖している。
セーラー服の上からでも咲ちゃんの体温が伝わる。
何もいじっていない、『ぼくと同じ、漆黒の髪』からはいい香りが――だめだだめだ。
可憐咲は名前の通り可憐な少女だ。
もちろん男子からも人気もある。しかし、何というか、彼女の誘いには誰も賛同しない。それは、彼女が遊びに誘った子は必ず怪我をするからだ。
行く先々で何かしらのトラブルがある。だからこそ、この旧校舎探索も誰も賛同しなかった。その時、白羽の矢が立ったのがぼくというわけだ。
まあ、ぼくも誘いを拒否すればいい話なのだけど――ぼくは思う。
もし、起こりうるトラブルが――1人では無理でも、2人なら解決できるものならば?
だとすれば、ぼくは咲ちゃんを放っておけなかった。そういった理由でぼくはここにいる。
ぼくが少し咲ちゃんについて考えていると、ある異変に気付く。少し床が揺れてないか!?
「どうしたの?」
ぼくが足を止めたのが気になったのか、咲ちゃんはぼくに訊く。
「いや、なんかこの建物揺れてないか?」
「ど、どうしよう地震かな?」
地震だとするなら非常にまずい。古い建物だ。すぐに崩れてしまう。
ぼくは、ここから外に出るべきだと思い、ぼく達が来た階段の方へと目を向ける。
そこには――触れるだけで皮膚を溶かし、一瞬にして骨を蒸発させてしまいそうな、ヘドロ状のナニかだった。
廊下の幅を塞ぐ程の巨体。これでは階段まで辿りつけない。
咲ちゃんはぼくの手を握り、化け物とは反対側へ引っ張る。
ぼくは化け物から目を離せないでいた――が。
急に咲ちゃん手から力が抜けた。そして、重さが感じられなくなった。
不思議に思いぼくは、化け物から咲ちゃんへと視線を移す。そこには――胸から上がごっそり無くなった咲ちゃんであろうモノがあった。
「あ……あぁ」
咲ちゃんの手が、ずるりとぼくの手からすべり落ち――ゴトリと床に転がる。なんだこの状況は? 目の前の光景は異常だ。
上半身が無くなり、仰向けに倒れている咲ちゃん。転がる手。広がる血だまり――
「うわあああああああああああああああああああああああ――」
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