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空
俺は、荒城真。
神山高校2年にして、サッカー部エースだ。
有名なサッカークラブからのオファーも決まってるし、その辺のやつらじゃ俺に敵わねえ。
まあ、そのサッカークラブも俺の踏み台でしかねえけどな。
しかし、今はそれどころではない。
俺が登校中に必ず上空に現れるアイツ――アイツは、最初黒い点でしかなかった。
日に日にその黒い点は大きくなり更に人の顔の形をとっていった。
ニヤニヤと口らしきものをゆがませ、俺を見下ろしやがる。なんなんだ……。
俺はアイツから目を離せない。もし、目を離したらアイツが襲いかかってくるような気がして……。
俺が目でアイツを牽制しながら歩いていると――急に後ろから腕を掴まれた。
「ああん?」俺は、後ろから腕を掴んだ奴に顔だけ向けると威嚇する。
そこには、白髪の――俺と同じ学生服を着た男子がいた。確かこいつは黒猫塚白猫っていう、クラスは違うが同じ2年の奴だ。
黒猫塚白猫――不吉のようなそうでないようなよくわからない名前。黒猫が目の前を通りすぎたと思うと次の瞬間、白猫が横切る。まるでプラマイ0のような。
「荒城真君。向上心があることはとてもいい事だけれど――上ばかり見てると足元掬われちゃうぜ?」
正確には巣食われる――と訳のわからねえことを言いやがる白猫。とりあえずぶん殴ってやろうかと思ったが、白猫はクイっと顎で俺の足元を示す。俺はそれが気になり足元を見る。
そこには――蓋の開いたマンホールがあった。気付かずにそのまま進んでいたらと思うとゾっとし、マンホールの中を覗き込んだ。
中には、非常に残念そうに顔をしかめたナニかが――『チッ』っと、舌打ちをした。
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