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デートがしたい
家に帰ると、野々実は笑顔で出迎えてくれた。さっきの妄想を知られていたのかと思うと、いたたまれない……。
「どうしたの?」
ニッコリ微笑む野々実は、女神に見えた。こんな俺を許してくれるなんて!
「なんでもない。これ、買って来たよ」
「わあ、ありがとうー」
野々実は袋を受け取ると、両手を合わせ、小首を傾げて微笑んだ。か、かわいい……。この笑顔のために、俺は生きている。
今、気付いたのだけれど。今日の野々実の服装は、デートイベント用の物だ。濃いピンク色のスカートが、歩くたびヒラヒラと揺れる。
ポンっと、選択肢が表れる。
A「かわいい服だね」
B「その服、かわいいね。野々実の方が、かわいいけど」
C「このまま、デートしない?」
迷わずCを選ぶ。着飾った野々実をどこかに連れて行ってあげたい。
ブブー♪ オシャレ度が足りません。
「え…?」
思わず自分の服を見る。毛玉のついたスウェットにジャージと、部屋着のままだった。さっきコンビニで笑われたように感じたのは、服装のせい?
取り合えず、1番いい服に着替えよう。クローゼットから一張羅のスーツを取りだして、着替える。これで良し。もう一度、Cを選択する。すると……。
『ドレスコードが違います』
困ったな。一体、どんな格好をすれば良いんだ? 思えば仕事で困ったときは、いつも周りのスタッフに頼っていたな……。
仕方なく、普段着に着替える。Cを諦めて、B「その服、かわいいね──」を選択。野々実は頬を赤く染め「ありがとう」と呟いた。
ちゃんと、努力しないとな……。ゲームなら、頑張れるのに。
「あのさ……。昼飯は、俺が作るよ」
「いいの? ありがとう」
そうだ。ステータスなんて、関係ない。俺は、野々実を笑顔にしたい。ただ、それだけなんだ。
「それで、昼飯食べたらさ……」
また選択肢が表れる。俺は無視して、野々実に話しかけた。
「一緒に、出かけない? 二人で……」
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