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「うん!」
野々実が嬉しそうに、笑顔で頷く。良かった。勇気を出して、聞いてみよう。
「どこに──」
A思いきって「遊園地に行こう」
B無難に…「映画館に行こう」
C女の子の好きな「買い物に行こう」
無視しようと決めたのに、選択肢が気になってしまう。
「どうしたの? 光太郎くん」
「何でもない……」
昼食は、俺が唯一作れる料理の炒飯。野々実は炒飯を見て感激する。一口食べてまた感激し、笑顔になる。
「こんなに美味しい料理が作れるなんて。光太郎くんは、すごいね」
「の……そんな事、ないよ」
野々実の料理の方が、おいしい。そう答えようとしたのに、言葉に出来なかった。自分の言葉で伝える、自信が無かった。
無言で食べる炒飯は味がなくて、時間だけが過ぎていく。
台所から響く、食器を洗う音で、ハッと我に帰る。このままじゃ、現実と何も変わらない。もしもこれが夢ならば、とるべき行動は1つしかない。
「野々実、一緒に出かけよう?」
「わかった。支度するから、ちょっと待ってね」
野々実は急いで食器を洗うと、さっきの袋を抱えて、洗面所へ向かった。
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