1.転校生とはいつの世も不思議な者である

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 学生が待ち望む昼休みになった。 弁当、あるいは学食を食べたり、それぞれの用事をこなして午後の授業まで過ごすことになる。  僕は、質問攻めにされている隣の席の転校生、十六女さんから離れて落ち着いて昼休みを過ごすために、いつもの場所へ向かうことにした。 購買でいつもの焼きそばパンとコーヒー牛乳を買い、階段を登り向かった先は屋上。 ではなく、その屋上に続く階段だ。 人もほとんど来ないので、一ヶ月前から重宝している。 「いただきます」  誰もいないけれど、僕は焼きそばパンとコーヒー牛乳に向かって手を合わせる。 それから、ビニールの袋を破り焼きそばパンにかぶりつく。  濃いめのソースが絡んだ細めの麺と、食べやすいよう小さく切られたキャベツ、そして柔らかいのに噛みやすいパンがとても美味しい。 もちろん、紅生姜の辛さもいいアクセントになっている。 うん、美味しい。  半分ほど焼きそばパンを一気に食べた後に、パンと麺で渇いた喉をコーヒー牛乳で潤す。 このコーヒー牛乳は、苦さとまろやかさの加減が絶妙でコーヒーが苦手な僕も美味しく飲める。 しかも、カフェインのお陰で午後の授業も微睡むことが減った気がするのだから最高だ。 階段の踊り場の窓から、秋らしい風も流れ込んできて気持ちいい。 「……ふぅ」  焼きそばパンを完食したところで息をはく。 と、そこに足音が聞こえた。 屋上も普段は解放していないので、ここに来る生徒はほとんどいないはすだ。 だから、誰が来たのかわからなかった。 僕と同じようにここを愛用している生徒だったら、コーヒー牛乳も残りわずかなのでここを譲ろうと思った。 けれど、現れた人物に僕は驚き固まってしまったのでそれはできなかった。 「十六女さん?」  現れたのは十六女さんだった。 転校生が、こんなところまで来るということは迷ったということなのだろう。 「教室に戻るには、ここから二階まで降りて──」 「迷子ではありません」  十六女さんはそう僕の考えを否定した。 失礼なことをしてしまったのだろうか。 そう思ったし、気まずくもあったので僕は立ち去ろうとするが、十六女さんに止められた。 正確には、十六女さんの言葉に止められた。 「和久田さん、ここの屋上には自殺した方がいるようですね。しかも、わたしが転校したクラスで」 「……だから、何だよ」 「事実を言っただけです」  十六女さんはその後にも何か言っていたようだけど、そこから去った僕には何を言っていたのか知ることはなかった。 焼きそばパンとコーヒー牛乳の残骸をごみ箱に捨てた後、僕は教室には戻りにくく、結局授業が始まる間際まで苦い気持ちで図書室にいた。
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