セフレとのひと時

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 僕は、おぉー!と心の中で叫ぶと共に熱い歓情が立ち上る湯気の様に心の奥底から込み上げて来て、「はっ、はい!」と悦服すると佐奈が目を閉じたのを良い事にまず至近距離にある彼女の容貌の造形に息を殺して見入った。閉じた目は切れ上がっている為に半眼に閉じた観音菩薩の慈眼を思わせる高雅とも優艶とも言える気品が漂い縋り付きたくなる様な慈悲深さや清らかささえ感じられ、これはサナさんの隠された資質を表しているのではないかと期待する。肌は運動部で頑張っているだけに透き通る様な白さとか雪をも欺く白さとかいった形容は使いたくても使えないが、女らしく赤みの差した新鮮な桃の様な色で肌理が細かく色艶があり何と言っても女は髭の毛根が無いから綺麗だと感心する。が、雀斑や面皰の痕や毛穴が目に付いて来るとプロブディンナグでガリバーが巨人を評した様に人間は実は案外、醜いものだと文学青年染みて辛辣に思ったりする。が、痘痕も靨で何でも良く見えてしまうのだから見惚れる他はなく見惚れる内、悪戯心が掻き立てられて行き、前髪でほとんど隠れているものの髪の隙間から艶やかな肌の光沢を垣間見る事が出来る額を見ていると髪を掻き分けたくなり、ふっくらとした瞼の裾から伸びる可憐な長い睫を見ていると息を吹き掛けたくなり、鼻筋の通った鼻のちんまりとした鼻孔を見ていると指先で穿りたくなり、張りが有って引き締まっていて、それでいてふんだんに弾力が有りそうな頬を見ていると指先で突ついてみたくなり、顔が小さい所為か意外に大きく尖った印象を受ける耳を見ていると指先で摘んで引っ張ってみたくなり、耳同様、尖っていてほっそりとした顎を見ていると下唇の右下にある小さな黒子に自然と目が行って唇とのコンビネーション効果で色っぽさを醸し出していると思う。そして黒子が引き立て役であるとすれば、主役である唇は薄紅に色づいた蛞蝓が合わさった様で僕はその朱唇に妖艶な趣を感じ、目を閉じながら唇を合わせて行った。「嗚呼、ふんわりしてて潤っている・・・吸い付く様でこの儘、離れられなくなりそう・・・」と感慨に耽っていると矢庭に佐奈が頤を解いて、「アハハハ!」と大笑いしたものだから僕は、と胸を衝かれ、パッと目を見開くなり、「うわあ!」と声を上げながら上体を大きく反り返らせた。
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