素敵な子

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 32歳で迎えた夏の或る晩、秀一は普段の憂さを晴らそうとスクラッチというライブハウスバーでいつものように焼酎をボトルで頼んでアイスベールの氷を時折、虚しそうに入れてオンザロックで飲んでいた。  今日はディープパープルのコピーバンドが演奏をしていた。なりはどうしても日本人だから本物に比べると、貧弱で地味だが、演奏自体は派手で迫力があって「スピードキング」に始まって「ブラックナイト」「バーン」「スペーストラッキン」と来て「スモークオンザウォーター」に入ってから文字通りスモークが掛かったように煙草の煙が空調の風に流されながら辺りに充満して淡い光に照らされながら大音量の音と融合して揺曳している。
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