『躾人』異世界へ行く

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 事切れた男は“45(しご)”の餌となった。  別室の浴室でシャワーを浴びて新しい服に着替える。エレベーターに乗り地上に行く。 「あ、電話しなきゃ」  ポケットからスマホを取り出し電話をかける。 「あ、もしもし僕です。ええ、例の始末終わりました。情報は“1(ビル)”届けさせます。それじゃ」  電話を切りスマホを仕舞う。ちょうどエレベーターは一階に着いた。 「さてっ!どこでご飯食べようかなー」  エレベーターが着いた先は雑居ビルの中だった。  ビルを出ると焼肉の匂い充満していた。 「この近くには焼肉屋があるんだな〜、よし、焼肉にしよっと!」  ポケットから完全ワイヤレスイヤホンを取り出して、ケースを開けて中身を耳につける。ボタンを押すとクラッシックが流れ始めた。 「♪〜〜、♪〜」  鼻歌を歌いながら夕方の街を目的地の方に向かい歩く。  周りの女性たちからは熱い目で見られているがそんなの御構い無しだ。なんたって音楽に夢中だから。  数分して目的の焼肉屋さんに到着した。イヤホンを外しながら店内に入る。  時間が時間なため少し混んでるようだった。 「いらっしゃいませ!何名様ですか?」  アルバイトと思しき高校生くらいの男の子が対応してくれる。 「ひとりです」 「畏まりました、禁煙と喫煙どちらにしますか?」 「喫煙で」 「ではご案内いたします、どうぞこちらに!」  ハキハキとした元気のいい少年に気分が良くなる。 「こちらです、メニューがお決まりになりましたらこちらのボタンでお呼びください」 「あ、待って、もう決まってるから。牛タンを10人前お願い」 「わ、わかりました。牛タンを10人前」 「あと、ドリンクを2人分お願い、もしかしたら後で来るかもしれないから」 「わかりました」  『躾人』を目撃した女性達は急にそわそわし始めた。 「ねぇ、あの人かっこよくない?」 「やばいやばい!焼肉に女二人で来てるって印象悪く無い!?」 「でも来てなかったらお目にかかれてないよ」  ヒソヒソと話す二十代前半くらいの女性2人。周りの女性も似たようなことを話している。  そんな時バイトの高校生くらいの子が牛タンを持って『躾人』に近づく。 「お、おおお、おま、お待たせいたしました!ぎゅ、ぎゅぎゅぎゅ牛タンでしゅ!」 「ふふ、ありがとうござます。慣れてないのかな?落ち着いてやれば大丈夫だよ」 「は、はひぃ〜、あ、ありがとうございましゅ〜」  持ち前の甘いマスクに甘美な声、そして決して怒ることなく優しくしてくれる。  もう、落ちるしかない。 「あ、あの!す、好きです!」 「およ?それは〜、愛の告白かな?」 「し、失礼しました!」  勢い余って告白した女の子。そしてそれに気がついて顔を真っ赤にして戻ろうとする。 「きゃっ!」 「おっと」 「あん」 「よいしょ」  JKの後ろに迫っていた女に気が付かず振り向きざまにぶつかる。  結構な大きさの胸に弾かれて両者倒れそうになるが『躾人』が二人を抱えるようにして支えた。 「全く、ちゃんと気を付けてよ『雅』」 「うふ、ごめんなさいね。お嬢さんもごめんね」 「い、いえ、私の方こそ失礼しました!」  支えていた手を離し2人が和解?するのを待つ。 「それじゃあ食事しようか、雅」 「おまたせ、レオ」  どうやら『躾人』の偽名の1つはレオだそうだ。  2人は飲み物を注文した。 「取り敢えず乾杯」 「乾杯」  カチン、とグラスを当てる。  雅の容姿は黒髪ロングの超美人。プロポーションもよく、112億年に一人の美女の異名が付いている。  流石に言い過ぎであるが、地球がもう一度同じ年月過ぎるまで、現れることはないであろう程の美しさ…との評価だ。 「っんく、っんく、ぷはぁー、やっぱ仕事終わりはジンジャエールが美味しい!」 「ごくごくごくごくごくごく、ぷはぁー!やっぱり仕事終わりはりんごジュースにかぎるわね!」  2人は牛タン、ハラミ、カルビなどを食べながらそれぞれ寛いだ。 「ふぅ、ご馳走様でした」 「けふ、ご馳走様でした」  3人は雅の運転するSUVに乗り込む。運転はレオだ。 「お客さん、どちらまで?」 「世田谷までお願いしまぁ〜す」 「かしこまりました」  茶番を挟みつつ運転を始める。 「それで?」 「私の方は楽だったわよ?ちょっと薬打ったら従順になってくれたもの」  二人の関係は仕事仲間であり男女の付き合いもある。  そんなこんなで雅の住む高級マンションまで残り信号が一箇所となった時それは起こった。
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