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何があったかと言うと、男達がレオに掴みかかった時から始まる。
レオは金木犀の香りの香水を付けている。そして特製の幻覚剤と混ぜて使っているため、服と服がぶつかるくらいの距離になると作用する。
効果は単純、本人の都合のいい幻覚が見れる。さらにその間は何をされても気が付かないでいる。また、解除するにはレオが指を鳴らす必要がある。
それまでは絶対に解けない。
勿論対象の選択は可能だ。
ゴロツキ達がシャドーファイトを繰り広げている間に、スフルが連れてきた狼達にお願いして、ウィンナーを食いちぎって貰った…。というカラクリになっている。
「ばいばい」
狼達をスフルが野に連れて行く。
「それじゃ、行こうか」
案内役のスフルが不在の為ビルが代わりを務める。
その後は特に何事もなく20分ほど歩き、一行は一等地、所謂貴族街と呼ばれるところへ足を踏み入れた。
その頃にはスフルも戻ってきており、先頭を歩くのはスフルだ。
「あ、そう言えばリュカちゃんもいたんだ」
「えぇ?レオ忘れてたの?こんないいものをお持ちなのに?」
「ひゃ!」
すっかりとその存在を忘れていたレオは振り返る。忘れていたのはレオだけで他のメンツは覚えていた。
「双葉を付けておけば変なのは寄ってこないだろうさ。あとはユチとイキがいれば大丈夫かな」
「ちょっと、リュカちゃんはレオのお嫁さんなんだからね?一旦家に帰させるなら後でレオが迎えにいくんだよ!」
レオは護衛として見た目だけは強そうな双葉と同じ女性のユチ、本当の護衛のアサシンイキをつけて、リュカを家に返そうとする。
しかし雅はこれに対し意見した。リュカのお嫁さん計画は揺るぎないものらしく、聞くところによると洗脳……失礼、承諾済みらしい…。
そのため、後で結納金を持って迎えに行けとうるさい。
「わかったわかった。リュカちゃんもそれでいいの?」
「は、はい!ふ、2日酔ですが、精一杯ご奉仕させて頂きます!」
「ふふふ、不束者ね?こっちこそ宜しく。身内になるから硬くならなくていいよ、痛いことはしないから」
その言葉は信用してはいけないタイプだが、本人は気がついていない。
「ここです」
貴族街に建っている一際大きな屋敷の前についた。
「うんうん、いいねぇ!よし、入ろ!」
「スフル君いい趣味してるね!」
門を潜り扉を開ける。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
「ただいま?でいいのかな…これから君たちの主人のジル・オーエンズと言う。よろしくね」
「私はサラ・カイエンっていいまぁーす。よろしくね」
レオと雅は偽名で名乗った。言ってしまえばレオと雅も偽名なのだが、この世界で名乗っていくのはジル・オーエンズとサラ・カイエンということになった。
早速部屋を決めたがあまり意味をなさないだろう。なぜなら雅もビルもユチも、みんなレオの部屋に入り浸るからである。
この屋敷のメイドは15人、執事は18人、庭師が4人に調理師が9人。そのほかにもいるが割愛する。
「さて、みんな着替えた事だし今後のことを話して行こうか」
「まずはリュカを迎えに行かなきゃね、それから女性陣はお買い物ね!」
「それでいいかな、やる事なんてないし時間も沢山あるからね…」
レオ改めジル、雅改めサラの2人は完璧に村長の存在を忘れている。
「ジル様、例の奴隷をお忘れですよ」
「あ、ほんとだ…じゃあリュカを拾った後は一回別れようか。用事を済ませたら合流する」
取り敢えずの方針は決まったため行動に移す。
ユチの案内でリュカを迎えにいく。きちんと結納金も持っている。
「リュカの家ってどこらへんにあるの?」
「ん〜とぉ〜、スラム街のすぐそばですねぇ〜」
「それは、嫌な予感がしますね」
ビルの嫌な予感というのはシックスセンスではなく、ちゃんとした計算に基づいている。そのため結構な確率で当たる。
「着きましたよぉ〜」
「ここか、ん?血と汗の匂いがする、お邪魔します!」
すんすんと鼻を鳴らし異変を察知するジル。そのジルの横に服だけが浮いた状態の人型が現れた。
「お疲れ様です、この家に悪漢が侵入してきましたので確保しておきました。耳と鼻を削ぎ落とした以外は欠損無しです」
「ありがとう、イキ」
報告を終えると完全に見えなくなる。一行はそのまま進んでいきリュカを見つけた。リュカの母と話し無事に嫁にもらう許可を得る。
リュカは女性陣とともに買い物に出かけ、ジルは悪党を引っ張って奴隷館に向かった。
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