『躾人』異世界へ行く

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 何があったかと言うと、男達がレオに掴みかかった時から始まる。  レオは金木犀(きんもくせい)の香りの香水を付けている。そして特製の幻覚剤と混ぜて使っているため、服と服がぶつかるくらいの距離になると作用する。  効果は単純、本人の都合のいい幻覚が見れる。さらにその間は何をされても気が付かないでいる。また、解除するにはレオが指を鳴らす必要がある。  それまでは絶対に解けない。  勿論対象の選択は可能だ。  ゴロツキ達がシャドーファイトを繰り広げている間に、スフル(0)が連れてきた狼達にお願い(・・・)して、ウィンナーを食いちぎって貰った…。というカラクリになっている。 「ばいばい」  狼達をスフル(0)が野に連れて行く。 「それじゃ、行こうか」  案内役のスフル(0)が不在の為ビル(1)が代わりを務める。  その後は特に何事もなく20分ほど歩き、一行は一等地、所謂貴族街と呼ばれるところへ足を踏み入れた。  その頃にはスフル(0)も戻ってきており、先頭を歩くのはスフル(0)だ。 「あ、そう言えばリュカちゃんもいたんだ」 「えぇ?レオ忘れてたの?こんないいものをお持ちなのに?」 「ひゃ!」  すっかりとその存在を忘れていたレオは振り返る。忘れていたのはレオだけで他のメンツは覚えていた。 「双葉(28)を付けておけば変なのは寄ってこないだろうさ。あとはユチ(3)イキ(2)がいれば大丈夫かな」 「ちょっと、リュカちゃんはレオのお嫁さんなんだからね?一旦家に帰させるなら後でレオが迎えにいくんだよ!」  レオは護衛として見た目だけは強そうな双葉(28)と同じ女性のユチ(3)、本当の護衛のアサシンイキ(2)をつけて、リュカを家に返そうとする。  しかし雅はこれに対し意見した。リュカのお嫁さん計画は揺るぎないものらしく、聞くところによると洗脳……失礼、承諾済み(・・・・)らしい…。  そのため、後で結納金を持って迎えに行けとうるさい。 「わかったわかった。リュカちゃんもそれでいいの?」 「は、はい!ふ、2日酔ですが、精一杯ご奉仕させて頂きます!」 「ふふふ、不束者ね?こっちこそ宜しく。身内になるから硬くならなくていいよ、痛いことはしないから」  その言葉は信用してはいけないタイプだが、本人は気がついていない。 「ここです」  貴族街に建っている一際大きな屋敷の前についた。 「うんうん、いいねぇ!よし、入ろ!」 「スフル(0)君いい趣味してるね!」  門を潜り扉を開ける。 「お帰りなさいませ、ご主人様」 「ただいま?でいいのかな…これから君たちの主人のジル(・・)オーエンズ(・・・・・)と言う。よろしくね」 「私はサラ(・・)カイエン(・・・・)っていいまぁーす。よろしくね」  レオと雅は偽名で名乗った。言ってしまえばレオと雅も偽名なのだが、この世界で名乗っていくのはジル・オーエンズとサラ・カイエンということになった。  早速部屋を決めたがあまり意味をなさないだろう。なぜなら雅もビル(1)ユチ(3)も、みんなレオの部屋に入り浸るからである。  この屋敷のメイドは15人、執事は18人、庭師が4人に調理師が9人。そのほかにもいるが割愛する。 「さて、みんな着替えた事だし今後のことを話して行こうか」 「まずはリュカを迎えに行かなきゃね、それから女性陣はお買い物ね!」 「それでいいかな、やる事なんてないし時間も沢山あるからね…」  レオ改めジル、雅改めサラの2人は完璧に村長の存在を忘れている。 「ジル様、例の奴隷をお忘れですよ」 「あ、ほんとだ…じゃあリュカを拾った後は一回別れようか。用事を済ませたら合流する」  取り敢えずの方針は決まったため行動に移す。  ユチ(3)の案内でリュカを迎えにいく。きちんと結納金も持っている。 「リュカの家ってどこらへんにあるの?」 「ん〜とぉ〜、スラム街のすぐそばですねぇ〜」 「それは、嫌な予感がしますね」  ビル(1)の嫌な予感というのはシックスセンス(第六感)ではなく、ちゃんとした計算に基づいている。そのため結構な確率で当たる。 「着きましたよぉ〜」 「ここか、ん?血と汗の匂いがする、お邪魔します!」  すんすんと鼻を鳴らし異変を察知するジル。そのジルの横に服だけが浮いた状態の人型が現れた。 「お疲れ様です、この家に悪漢が侵入してきましたので確保しておきました。耳と鼻を削ぎ落とした以外は欠損無しです」 「ありがとう、イキ(2)」  報告を終えると完全に見えなくなる。一行はそのまま進んでいきリュカを見つけた。リュカの母と話し無事に嫁にもらう許可を得る。  リュカは女性陣とともに買い物に出かけ、ジルは悪党を引っ張って奴隷館に向かった。
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