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そんな店主を見てカップを持った。そして香りを嗅ぐ。
「ん〜、とてもいい香り、上品な……」
そして一口……する寸前で口を開く。
「あぁ、そうだ。さっきの続きなんだけど、スラム街の入り口あたりにいた人も下がらせといてくださいね」
「そ、そこまでもお見通しですか…わかりました」
これに関しては少し驚いたようで動揺が隠せていなかった。
気を取り直して一口。
「あぁ、とても美味しい」
「そうでしょう?なんたって独自でブレンドしたものですから」
「しかし、こんなに美味しいのに毒が入っているのが許せない。これは神経系の毒。一口飲むと10分程したら全身が麻痺するタイプですか…」
紅茶を口にしたジルに笑みを浮かべる店主。美味しいとの言葉に気を良くしたのか、胸を張る。
しかし、紅茶に毒が入ってると言ってからは表情が固まった。
「そして、これを飲み干すと主要な臓器が機能停止する…ってところかな?飲まなくても、香りを嗅いだ時点で毒が入ってきてる感じがしたなぁ〜。これ、どういうこと?」
部屋の空気が重暗くなる。
「大変失礼致しました。私が命令して先程の物に入れさせました。僭越ながら試させて頂いた事になります」
観念して首を垂れる店主。
聞くと、新規の客は毎回同じことをして試しているのだとか。
「ようは通過儀礼みたいなものかぁ〜。じゃあ、死にたくなければこれから贔屓してね」
「……わ、わかりました」
「だけどこの落とし前はつけて貰わなくちゃね。ん〜何がいいかなぁ〜」
通過儀礼だから、みんなにやっているから、と言った理由で許してしまえばそれまでだ。
きっちりと責任を追及して後腐れない関係にしないと双方に不利益だ。
「耳…うーん、足りないなぁ。鼻…いらないしなぁ〜。唇、指、舌、腕、足……どれもイマイチだなぁ〜。ねぇ、どこがいいと思う?」
体の各部位を淡々と述べていくジル。足や腕といった際には店主の顔は蒼白していた。
「やっぱ僕が決めよ、眼球か性器の何方かがいいかなぁ〜」
「そ、それだけは!そうだ!商品の中から好きなのを持っていってください!それでお情けを!」
頭を地面に擦り付け懇願する。しかし、
「どの立場でもの言ってんだ?ごちゃごちゃぬかすとてめぇの脊髄引っこ抜くぞ」
キレた。
「おっと失礼、僕は拷問や尋問、調教以外でしつこいのは嫌いなんだぁ〜…ましてや命を狙われたわけだし」
余りの恐怖に呼吸すら出来ない店主は、いっそのこと気絶したい…と思うのであった。
この日王国の裏社会のトップがジルになったことを知るのはもう少し後である。
ジルも含めて。
「じゃ、君の眼球は貰ってくねぇ〜。それと、今後ともご贔屓に〜」
特殊な液体が入ったガラス瓶の中には、視神経が途中で切れてる眼球が1つ入っていた。
奴隷を売っ払い、新たな奴隷をお詫びで貰い、眼球までも貰ったジルはすっかりご機嫌になっていた。
店を振り返りながら出ると、そこにはゴロツキが10人弱立っていた。もちろん奴隷店とは無関係だ。
「よぉ、にいちゃん。いい女侍らして景気いいなぁ〜」
「あはは、わかる?そうなんだよねぇ」
「あ?舐めてんのか?女置いて消え失せろって意味だよ」
なんだか似たようなことが数時間前にもあった気がする…。と思いつつも拷問に移る……失敬、行動に移る。
「さて、イキさん、拘束は頼んだよ。こっちは公開処刑の準備を進めとくから」
そういうや否やゴロツキたちはあっという間に拘束されていき、1分もしないうちに芋虫が出来上がった。
対してジルの方も、どこからともなく現れた双葉の能力によって仕事道具をセットしていく。
「よし!準備完成!……さぁさぁ、殺ってらっしゃい見てらっしゃい!今後僕たちに関わるとこんな目に合うという体験を、彼らが身をもって教えるとのことで……ではキャストに大きな拍手を!」
いきなり始まった大道芸のような催し。拍手を、の所で拍手したのは双葉と、見えないがイキのみだ。
「大きな拍手ありがとうございます!では、早速参りましょう!エントリーナンバー一番、子犬くんです!」
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