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「ただいまぁ〜」
「お帰りなさいませ、ご主人様」
セルフィー、アイリスに加え新たな奴隷(男)のアダムを伴い家に帰る。
中に入るとちょうど玄関の掃除をしていたメイドがいた。
「あ、おかえり。遅かったわね」
玄関が騒がしくなったのが聞こえたのか、奥の方からサラがやってきた。
「あ、合流のこと忘れてた……いやぁ〜、処刑ごっこをしてたら遅くなっちゃったよ」
頭のおかしい会話を堂々としているが、この屋敷で働いている全員が調教済みなのでなんら問題はない。
「ふぅ〜ん……じゃ、食堂にいきましょ?」
「そうだね、お腹すいたよ」
いつまでも玄関で話しているわけにもいかないので、場所を食堂に移す。
食堂に入り執事が引いてくれた椅子に座る。
「本日の夕食は近海で取れた魚介類をふんだんに使ったペスカトーレでございます。お飲み物は白ワインをお持ちしました」
隣にはサラが座り、ビルやユチの姿はない。
メイドがカートを押して傍まで来る。右側から白ワインをグラスに注ぐ。
今度は左に回ってスパゲッティを置き、一礼して後ろに下がる。
「ん?こっちの世界の料理と向こうのって同じなのかな?」
「そんなわけないじゃない。どうやら食材は一緒だったみたいだけど、料理は完全に別。ビルが伝授したのよ」
この世界では科学や文化の発展が遅れているため、文明が地球よりも劣っている。
いいものを食べれるのは貴族の道楽であり、一般家庭では内陸に位置する王都で新鮮な海鮮類は手に入らない。
「ふぅーん、頂きます。お?美味しい…」
納得したのかしてないのかは定かではないが、ご飯を食べ始める。
「それで?今日は何があったの?」
待ちきれないとばかりに、横にいたサラが急かす。
「ん、そうだったね。えーっと、まず雅達と別れた後は予定通りに奴隷商人のところへ行ったんだ。そしたら………」
特に隠し立てすることもないため奴隷商との駆け引きに始まり、闇市での出来事迄を分かりやすく簡潔に説明した。
「なにそれぇ〜、超面白そうだったじゃん!私もついていけばよかったなぁ〜」
「そういうそっちは?」
「こっちは何事もなかったよ〜。まずは洋服買って、次に洋服買って、下着買って、必需品買って、洋服買ったくらい」
1に洋服、2に洋服…3、4が飛んで、5に洋服………。
「あはは、まぁいつも通りか」
「そうね」
荷物持ち兼護衛の双葉が着いていたために、誰かに絡まれることもなく買い物ができた。
ただ、時々ジルの方を優先させていなかった時もあるが……。
「ふぅ、美味しかった。ごちそうさま」
サラと会話しながらゆっくりと食事を取り終えた。
「旦那様、この後のご予定では露天風呂にて女の子とくんずほぐれず……その後、就寝前に女の子とくんずほぐれず、となっています」
「ほほぅ。サラ君。君ももちろん参加するであろう?いや、参加しなさい」
「かしこまりました。旦那様のご命令とあらば……」
お酒が入ってほろ酔いになりイチャイチャしだす2人。
そんな中邪魔しないように気配を殺して片付けをするメイド。
異世界に来て2日目にして衣食住の全てと、王国での裏世界の揺るぎない地位を確立した一行。
そして新たに奴隷になったセルフィー、アイリス、アダムの3人。
これから王国に起こるは大小に関わらず、そのすべてに彼らが関与する事になるとは誰も思わないだろう。
まだ見ぬ王国の善悪問わず全ての権力者たちに胃薬を捧げたいと思う。
【権力者に必要なものは様々ある。カリスマ性、敏腕、優秀な部下、判断能力など……その中でも絶対に欠かせないのが胃薬である】
(マーリーン著『人間と権力と私の好きな食べ物』第一章・第五節、『権力者と胃薬』より抜粋)
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