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薄暗い部屋に悲鳴が響く。
「ふぅ、ふぅ、くそっ!」
「ふん、ふふん、ふふーん。次は何がいいかなぁー」
「…な、何をされても話すもんか!」
濃い血の匂いがそれなりに広い部屋に広がる。
「そーだなぁ、君には選択肢をあげよう。1つ、一二三の中から好きな番号を選ぶ。2つ、君のケツを掘る。もちろん僕じゃないよ、僕の飼い狗が『ここ掘れワンワン』ってね」
「へっ、誰が!」
「まだあるから聞きなよ。せっかちは嫌われるよ?……最後は君の指を第一関節から一本ずつ切り落としていく。切り落とした指で君の絵を描こう。指から血が出なくなったら次の指を、っね」
部屋の中には椅子に縛り付けられている大柄な男と、一万人中一万人が振り返る美男子が真っさらなキャンパスの前に血濡れた姿で立っている。
「僕のお勧めは一番かな〜、どれもとっても気持ちいよ?」
「どれも選ばねぇよ!死ねカス!」
椅子に縛られている男に向かって極上の笑顔を見せながら言うが、男から返ってきたのは罵声と唾だった。
「じゃあ、僭越ながら僕が決めさせていただくとするよ。君は2番を選択した!おめでとう!君は僕のペット“117”の友達になる事を許可しよう!」
そう言って美男子は指を鳴らす。この部屋に唯一ある鉄の分厚い扉から入って来たのは、ある一箇所を除いては至って普通の男だ。身長165〜170程で太っておらず痩せてもいない、白目を向いて半開きの口からは涎と変な唸り声が聞こえる。
真っ裸である事と馬の倍くらいの太さと長さの男性器であることを除けばいたって普通である。
「“イイナ”、ちゃんと壊さないように激しく遊んでもらうんだよ?終わったら扉を二回叩いてね」
「な、なんだよ…こいつに何させるんだよ!なぁ!おいってば!」
「そんじゃ、ごゆっくり〜」
“イイナ”と呼ばれた化け物が頷くのを見て満足げな表情をして部屋を出る。
扉が閉まるまでの間男の叫び声が聞こえたが、扉が閉まると何も聞こえなくなった。
扉の外に置いてある椅子に座り小説を読む美男子。この男の本名はない、異名は数多くある。『サイコパスキラー』『完璧な絵師』『奴隷商人』『奇術調教師』『傾国の美男子』などなど、上げたらキリがない。
本人は『躾人』と名乗っている。読み方は『しびと』『しつけにん』『たしなみびと』『しっと』など、こちらも多数あるが仕事によって変えたりする。
ゴゥンゴゥン!
扉が叩かれた。
かなり重い扉を片手で軽く押し開ける。
金属同士の擦れる音が耳に障る。
「お疲れ様、“イイナ”。もう帰ってもいいよ」
「ごぁぁ〜、ぶふぅびびあいあ!」
瞳に黒目が戻ってきて口も閉じている。
しかし、その閉じた口から出たのは人の話す言葉ではなかった。
「うんうん、今回のはヤりがいがあったんだね、それは良かった!」
「がじがじが!」
「うん、おやすみ」
何故か話が通じている『躾人』は「バイバーイ」と、呑気に手を振って薄暗く湿っぽい廊下を歩いて行く“イイナ”を見送る。
「さてと、調子はどうだい?お嬢さん?」
皮肉を言う。
「………」
「うーん、もうそろそろかなぁ」
椅子に縛られていた男は全裸で転がっていた。
四つん這いで頭を地面につけ尻が突き出たような体勢で、ナニか白い粘着性の液体にまみれており、腹が少し膨らんでいて尻からも血と白い液体が混ざったようなものが垂れていた。部屋はかなり臭い。
男は気絶していない。いや、薬で気絶できないようにされているのだ。
さらには精神に作用する薬も打たれていて、精神崩壊もしていない。まさに地獄の沙汰だ。
そんな男を見ながら『躾人』は満足そうにするのだった。
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