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「ねぇレオぉ〜」
「なんだい、ハニー」
「あたし、欲しいの」
「なにをだい?」
「あなたの種」
「…………」
SUV……ランドクルーザーに乗って草原を30km/毎時でゆっくりと走っている時にそれは起こった。
「だって結局できなかったじゃ無い。セ「みなまで言うな」スしよ?」
「……言い切っちゃったよ。まぁ確かにやってないけども。うーん、どうしよう」
「すっきりしよーよ…ね?」
助手席に座る雅が身を乗り出してレオの下半身を弄る。
「ふぅ、わかったわかった。一回止まるから手を止めて?」
「はむっ、もふむひ♪」
「よいしょ、しょーがないなぁ」
ブレーキを掛けギアをパーキングに入れる。
「ふぉら、ふはひもはんはひへ!はむはむ」
「「御意!」」
「ふ〜、これは大運動会が開催される予感……」
「ふぅ、ふぅ、化け物め〜、3人がかりで2人気絶の1人満身創痍ってどういう体力してるの?」
「あはは、何でだろうね?まぁ、いいや。雅も寝てていいよ、進めとくから」
「ありがと、おやすみ」
「うん、おやすみ」
昼の車内大運動会はレオの一人勝ちだったようだ。
「急ぐ移動じゃないとは言え、だいぶ時間使ったなぁ〜」
車内はすっかり静まり音量を下げたクラッシックが心地よい。
日没まであと少しと言うところで小さな村を見つけた。
近くまで行かずにある程度の所で車から降りる。
「おーい、28〜、車しまって〜」
「わかりました『七色』様、よいしょ」
「ありがと」
「勿体無きお言葉」
熊のような男が現れ車をペタペタと触る。すると車が縮小されていく。
「それじゃ行こうか」
「こっから見えるけど壁はおろか柵すら無いって大丈夫なのかしら」
「すでに偵察は済んでおります。村民数54人、男女比は24:30です。10〜20代が16人、21〜40代が23人。村長と思しき65歳が1人、あとは赤ん坊です」
「商店が2店舗、夫婦は12組、番兵が1人、あとは平凡な農民です」
「よし、それじゃあこの面子とイサミで行こう。残りは待機」
「御意」
行動を開始する狂気の集団。
何も知らず平凡な毎日の終わりを迎えようとしている平和な村に訪れるのは、地獄か変わらずの平和な日々か……
それを知るのは『躾人』達と村の人々の対応次第……
「そうだ0、根を回しといて」
「sure」
徐に発した言葉。それに対して初めからそこにいたかのようにレオの右斜め後ろに平凡な青年が現れる。
オーダーを受け返事をすると瞬きの間に消えた。
「うわぁ〜!久し振りにスフルくんを見た!今年はいい年になりそうだなぁー」
「ふふふ、それじゃあこれからは毎日一回は呼ぼうか?」
「それは良く無いわ!スフルくん過剰症になっちゃうもん」
スフルくん過剰症が何なのか分からないが、取り敢えずスフルのレア度はMR(mysterious rare)のままのようだ。
10分ほど歩くと番兵が切り株に寄りかかり眠りこけているのが見えてきた。
番兵といってもど田舎の農村に大層な装備などあるわけもなく、武器は全長150cmほどの粗悪な槍と、ショートボウのようだ。鎧なんかはしておらず麻布の服を着ていた。
「あそこまで無防備だといい悲鳴が聞こえそうです、許可を」
「ビル、どうして君は時々悪魔が出て来るんだい?今回は『拷問官』でも『調教師』でも『剥製師』でも無いんだ。友好的に……いいね?」
「失礼しました」
「うん」
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