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翌日、1日が経ち調教が終わった。村長は許可されるまで喋ることのできない人形のような状態になった。
「『七色』様、この国の首都に種を植えました。2、3日で覆る事のない根が奥深くまで張ります」
「わかった、ありがとう」
「こんな所早く出て首都に行こうよ」
こんな田舎にはいられない!とばかりに急かす雅。
「そうだね、この村でやることもないし…首都に行こうか」
村長が居なくなったことを除けば変わらない日常。そんな村長も辺鄙な村での活躍は無きに等しいため、居なくなっても騒がれない。
レオが記憶の書き換えを行っていたからでもあるが……
「こんな田舎でも馬車道のようなものがあるってことは、この国はそれなりに豊かなんだろうね」
悪路を物ともしないSUVに乗り快適な車旅を楽しんでいた。
「あ、また盗賊だ。クラクション鳴らしたろ」
時速40kmほどで走っているとちょくちょく盗賊と出会す。そんな時はクラクションを鳴らし危険を知らせる。
「うーん、どうしてみんな動きが止まるんだろう。まぁ良いか、轢いたろ」
所々言葉がおかしくなるレオ。それと同時に思考回路もおかしいため、轢き逃げを選択する。
盗賊達も初めはその異形と速度、音に驚いていたが気を持ち直す。しかしその時にはもう手遅れ。
今までの連中と同じように自分たちの手前で止まり、命乞いをしてくると思っていた。そしてそんな奴らを尻目に女子供は犯し、男は殺す。そして今回の獲物は上玉ばかり…
舌舐めずりをして各々の武器を構える。
「そこのばしゃぁー!とまれぇー!女と金を置いて行けばいの…ち……おいおい!ちょっ、ぶふぉおお!」
「か、かしごびゃぁあああ!!」
大声を上げて一生懸命に降伏勧告するが、一向にスピードを緩めない見たことのない馬車は無慈悲だった。
確殺!とばかりにペダルを思い切り踏む。かなりの質量の鉄の塊がとんでもないスピードでぶつかる。その結果は見なくてもわかる。
「ん?鹿でもあたったかなぁ」
「ちょっとぉ〜これ私の車!」
「14さんがいるから大丈夫だって」
レオ達の通った後は物言わぬ肉塊と、それを腰が抜けた状態で唖然と見つめる残党たちがいた。
その後もちょくちょく盗賊が出てきてはレオに轢き殺される運命を辿る。
『きゃあああぁぁぁ…ぁぁ…ぁ』
そんな時何か悲鳴のようなものが聞こえたが、車のスピードに悲鳴がついて来れずにすぐに通り過ぎてしまう。
「ねぇ?今悲鳴聞こえなかった?」
「そ?僕には喜んでる声が聞こえた気がするけど……」
「ほら!これってあれだよ、あれ!」
「テンプレート、ですか?」
「悲鳴が聞こえた」「いや、歓喜の声だよ」と、呑気に会話する。雅が興奮した様子で何かを言おうとするが「アレ」しか出てこない。
それを見かねたビルが通訳をする。
「はぁーはん?テンプレっていうと、この場合はヒロイン候補?」
「違うわよぉ〜、正ヒロインだよ!ほら!早く助けにいこ!」
「え〜めんど……めんどくさい」
やたら異世界の行事に興奮する雅を見て、レオは若干引き気味になりながら車の速度を落とす。
「絶対に行くわよ!まだ見ぬレオのお嫁さんを助けに!いざ行かん!!」
「こうなったら誰も止められない、か」
シートベルトを外しドアを開け、走行中の車から飛び出す雅を見たレオは、悟りを開いた表情で車を止めて雅を追う。
「だ、誰かたすけてください!!!」
『ギョエエエエエエエ!!!!』
「そこまでよ!」
先に辿り着いた雅は尻餅をついた女の子の前に立ち、気持ち悪い怪鳥に「びしぃぃぃ!」とポーズを決めドヤ顔を晒していた。
「おーい、雅ちゃんこれ面白いよ!」
「え?あ!何やってんのよ!主人公はさっさときてよ!あ、キミはstay」
「はぁーい」
レオは木から垂れ下がっていたツタを掴みターザンのようにして遊んでいた。その為急いでくるように伝える。
ただしモンスターにそんなことは関係ない。…はずである。雅のステイの一言で動けなくなっているが…
「よいしょ、それで?こいつを殺すの?拷問?躾ける?いや、躾けよう!」
首をコキコキと鳴らしながら雅の方に歩いてくる。殺す、拷問、躾、様々なことが口から飛び出るが、後ろの怪鳥を見た途端躾に決まった。
「これは、躾甲斐がありそうだ!早速取り掛かろう!」
先程までの消極的な態度は何処へやら、一変してペットにすると言い出した。というか躾を始めた。
「まずは拘束してぇー、耳切って〜後は体に覚えさせるだけ!」
レオと雅以外のものが混乱しているうちに拘束具を取り付け作業を始める。
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