家族の在り方

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 弟は勉強もしないで、スマートフォンでゲームをしてばかりいる。所定の位置はリビングのソファーの上。ダラーっと足を延ばして、椅子に浅く腰掛けだらしがない恰好だ。わたしだってゲームはするが、それは通学の電車の中だとか、友達と待ち合わせの時だとか、手持ち無沙汰で時間を潰さなければいけない時だけだ。家族仲良く集まっている時にスマートフォンを弄ってばかりいるなんて一家団欒の大事さを解っていない。  つい先日に聞いた話だと、弟は彼女が出来たことがないらしい。顔の作りは、まあ、悪くはないと思うから性格の問題なのだろうか。何時までも子供っぽいところがあるのがいけないのだ。  けれど、ま、わたしも人のことはトヤカク言えない。17歳の今でも彼氏が出来た試しがないのだから。  今度、学校で学園祭がある。わたしのクラスは女子と男子が逆の役をして、女子が男装。男子が女装してロミオとジュリエットの劇をすることになっている。ロミオとジュリエットをやると言っても、シェイクスピアの戯曲をそのまま行うのではなくて、少し内容を変えている。男子の提案で台本は喜劇や色々なものの織り交ぜになっているのだ。 「お姉ちゃんは何の役をやんのさ」  弟がふてぶてしい態度で聞いてくる。わたしはロミオの友人であり、けれどジュリエットに恋をしてしまった不細工な妖精の役を任されているのだ。ちょっとファンタジーが混ざっている何でもありの設定である。神も悪魔も出てくる。 「わたしは準主役だよ」  決して嘘ではない。出番もたくさんあるし、わたしが上手く演技しなければ、劇が台無しになるだろう。 「僕の学校も学園祭があるよ」  弟がスマートフォンを両手に持ちながら、画面を凝視して視線をこちらに向けずに言う。
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