家族の在り方

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 学校の門をくぐると4階建ての灰色の建物があって、わたしたち2年は2階だ。1学年が8クラスある大きな高校である。 「ユリナ、おはよう」  沙也加ちゃんが背中を叩いてきた。ふわっと茶色いストレートの髪からシャンプーの匂いがした。 「おはよー、天気が悪いね」 「ウン、ウン。昨日なんか寒かった」 「そうでしょう。わたしなんか買い物に行くのにダッフルコートを着たんだよ」 「それは大袈裟じゃない」  沙也加ちゃんがプッと笑う。でも10月になったら、いきなり季節が変わったように寒くなった。 「そう笑うけどね、もう冬の女王は直ぐそこに来てるよ」  わたしは真面目な顔をする。 「ファンタジーだなあ」  失笑されて照れ臭くなる。 「ふふふ、だってわたしは妖精だもの」  これでめげるもんかと胸を張って答えた。 「そうだった、今日の放課後、みんな残って劇の練習するんだって」 「そうなの?そう言われてみれば後10日間か」 「ウン、だから他のクラスに負けないように頑張らなくちゃ」  沙也加ちゃんが握りこぶしを作る。今日は遅くなるかな。後でお母さんにメールしておこう。  1時間目は国語からだ。そうして得意な数学があって、英語や体育がある。国語が苦手なことは否めないけれど、それでも勉強は好きだが体育は苦手だ。今は棒高跳びの授業をやっている。クラスのみんなはスイスイと1メートルを超すがわたしは何度やっても棒を落としてしまう。コツがあるんだろうが運動神経がないわたしには至難のわざだ。 「ユリナは不器用だねえ」  沙也加ちゃんが困った顔をしてわたしの方を向く。 「そうだねえ」  わたしは膝に手を置いて身体を折り曲げハアハアする。体育なんか早く終わればいいのに。空を見あげて独り言ちた。  放課後になって、ようやく劇の練習だ。わたしはジュリエットに恋をしている男の妖精、『ウィンキー』だ。段ボールとゴミ袋で作った大きな羽があって、デパートで買った白い布の衣装を纏う。『ウィンキー』は最後は悪魔の逆鱗に触れて自慢の羽をもぎ取られてしまうが神の情けにより人間に生まれ変わることの出来る悲哀かつ、少し優美な演技をする役回りだ。セリフはロミオ、ジュリエットの次に多く、涙まで流さないといけないという、女優さながらの演技をこなさなければなのだ。
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