家族の在り方

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「ユリナはいいなあ、わたしなんか、ロミオの召使いだよお」  沙也加ちゃんが羨ましそうに言う。それもそうか。ロミオの召使い役は出番が殆ど無い。でも本音を言えば主役がよかった。ジュリエットの役をするのはクラスで一番のイケメンの光吾くんなのである。光吾くんが女装するとハッと息を飲むほどに可愛い。 ロミオの役はクラスで一番背が低い女子だ。配役のときの投票で一番だった。 「沙也加ちゃんもさ、光吾くんのこと好きだもんね」 「ウン、ユリナと同じ」 「愛の告白をするシーンがあるんだよねえ。キュンとしちゃう」  わたしは両手を合わせて天井を仰ぎ見る。そしてロミオ役の口真似をした。 「ジュリエットが好きなんだ。例え、悪魔に身を売ろうとも」 「そうそう」 「ジュリエットの為なら神の子でなくなっても構わない」 「そうそう、ユリナ、上手い、上手い」  沙也加ちゃんは口に手をあてて笑う。 「もう、笑わせてるわけじゃあないのに」  わたしも可笑しくなった。  劇の練習はとんとん拍子に進む。練習で涙を流すことも出来た。この調子なら一事が万事、学園祭は大成功しそうだ。そうだ、弟の学校はどうするのだろう。余計なお世話かもしれないが家族なんだから上手くいってほしいと願うのは普通なんじゃないか。それに好きな子の話も途中までしか聞いていない。どんな子なのか追及せねば。それに幾ら文章が得意と言えども弟に脚本は難しいだろうから一緒に考えてあげなければ。何時もは、カップアイスを沙也加ちゃんと駅前で食べてから帰るのだが今日は早く帰ろうか。 「沙也加ちゃん、わたし、今日は用事があるから早く帰るね」 「珍しい、好物のチョコミントは食べないの?」 「昨日、鱈腹ね、食べたんだあ」  わたしはニッコリとした。弟のためだとは照れ臭くて言いづらい。
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