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「ふーん、ハルオのとこは何やるの?」
「ふふふ、僕んとこも同じ、劇をやるんだ」
弟はそう言うと、スマートフォンをテーブルに置く。自分の話をするためにゲームを中断したんだな。何時もそうやって自己中心的なんだから。
「へー」
わたしは興味なさそうにした。弟が劇をやるにしたって見に行くわけでもないし、見に来てほしいとも言わないだろう。
「僕がさ、脚本を書くんだ」
そうか。ハルオは文章力があったんだ。わたしはポンッと手を打つ。弟は小さな頃から作文や読書感想文で賞を貰っていた。身体をクルリと向き直すと少し興味を示して聞いてみる。
「どんな、劇やんの?」
「ふふふ、ミステリーさ」
「えっ、死体が出たり、殺人犯がいたりするやつ?」
「そうそう」
弟は頷いてから笑みを零す。ベビーフェイスの可愛らしい憎めない顔だ。顔をパッと見た感じはお母さんにそっくりだが、白い綺麗な歯並びがお父さんによく似てる。そういえばわたしはどちらにも似ていない。両親とも、大きな目で、わたしも大きな目をしているが、わたしの顔は笑うと目じりがあがる。家族たちはみんな笑うと目じりが下がってアライグマのようになる。
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