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「何、神妙な顔つきしてんだよ。あのさ、ラストをどうしようか悩んでるんだ。犯人って意外な人物がいいでしょ」
それはそうだ。良く刑事もののドラマを見るが、犯人は「えっ、この人が?!」という時が多い。わたしは相槌を打つ。
「配役もなかなか決まんなくてさ」
えっ、まだ決まらないのか。学園祭に間に合うのかな。
「ハルオのとこは何月何日にやんの?」
「10月20日だよ」
「じゃあ、後1ヶ月もないじゃない。間に合うの?」
わたしは他人事だが心配した。弟はまたスマートフォンを手に持ちゲームを始める。能天気なやつめ。
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。僕の学校は優秀なやつの集まりなんだぜ」
まあ、確かにそれは否めない。弟の高校はこの辺でも1、2を争う進学校なのだ。どうしてこの弟が偏差値を高く維持しているか謎である。だが、学園祭の劇ともなれば別物だろう。
「うーん、不安だなあ」
「ふふふ、僕はお姉ちゃんが、しっかり役を演じることが出来るかどうかの方が不安だよ」
「あっ」
ムカつくなあ。わたしはちょっと、膨れて片手を挙げた。
「2人とも仲がいいのは結構だけど、夕ご飯の買い物に行ってきてくれない?買い忘れちゃったものがあるの」
お母さんがタオルで手を拭きながら言う。
「えー、面倒だなあ」
弟が片手を挙げて伸びをする。買い物くらい、わたしが行こう。
「何、買ってくればいいの?」
片手を出して財布を要求する。
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