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わたしは布団に潜り込んで目を瞑る。赤い光が瞼の裏側に現れて、やがて白い光に変わる。そのまま深い眠りについた。
次の日はスマートフォンのアラーム音で目を覚ました。ビックリして起きるのは心臓に悪いので、穏やかなピアノの演奏が流れるようにしている。階下からは野菜を切る音が聞こえてきた。朝は必ずサラダを食べているのだ。お母さんの手作りのフレンチドレッシングを必ずかける。
「おはよー、あれ、ハルオはまだ起きてないの?」
「そうなの。ユリナ、起こしにいってくれない?」
「えー、そのうち起きてくるよ」
「そんなこと言って、この前も遅刻したんですよ」
お母さんが眉間に皺を寄せる。
「じゃ、ちょっと行ってくるか」
わたしは階段を速足で上り、弟の部屋のドアをドンドンと叩いた。
「あれ、お姉ちゃん」
弟が目を擦りながらドアを開ける。水色のパジャマ姿だ。ボタンが全部閉まってなくて、夏の日焼けが残っている肌を露出していた。わたしは恥ずかしくなる。
「早く起きないと、お母さんが心配してるよ」
「え、もうそんな時間?」
「ウン、朝ご飯が出来てる」
「あちゃー、昨日眠れなかったんだ」
弟はそう言って、わたしを邪魔にして階段を降り、洗面所に駆け込んでいった音がした。顔を洗うためだろう。寝ぐせも直せと言ってやりたい。でもわざわざ言わなくてもワックスでバッチリ決めるんだ。彼女もいないくせに洒落っ気ばかりついている。
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