絶対無理!

1/1
前へ
/12ページ
次へ

 絶対無理!

  高梨はそのまま、さっきのように僕を起き上がらせると膝の後ろを抱え、もう一方の手で背中を支える。  これって。 「お姫様抱っこじゃないかっ。降ろせよ」  足をバタつかせるも適わず、ベッドに運ばれる。そして「あっ」と言って高梨はクローゼットから大きめのバスタオルを取り出すと腰の下あたりに敷いた。 「これで汚れても大丈夫だから」  その用意周到すぎる気配りが怖い。  高梨はさっさと服を脱ぐとベッドヘッドの引き出しを開ける。さっきから思うに女扱いじゃないと言いつつも全然互角ではない気がする。経験値が違うということを差し引いてもこれは是正しなければならない。 「あのさ」 「何?」 「僕も高梨の服脱がしたかったんだけど」  脱がされたんだから脱がしたい。やられたらやり返すって別に喧嘩しているわけじゃないけど、僕だって男なんだ。それを高梨に分からせたいと思ったのに、ごくりと唾を飲み込む音がして、裸になった高梨が飛び込むようにベッドに乗上げてきた。ベッドのスプリングが悲鳴を上げる。 「今、思わずイキそうになった」そう言う高梨は、真っ赤になって僕を睨んだ。実際にはそんなわけないと思うけどそんなこと言う高梨は可愛い。  肌色に薄いピンクを混ぜた色合いは白人の血が混ざっているせいなのか。筋肉が程よくのった体にただ見とれていると高梨は、引き出しから液体が入ったボトルと小さい箱を取り出した。 「何、それ?」  ああ、これねと言いながら高梨がボトルの蓋を跳ね上げて容器を逆さにして、中身を手で受ける。トロンとした液体が彼の手の平にたっぷりとのせられて揺れる。 「司は、初めてだからね。初めが肝心ということで」 「……? 何言ってるのか分からないんだけど」 「これから分る」  高梨の手がすいっと僕の下腹部に降りて、手のひらのものをたっぷりと塗られる。冷たくてねっちょりしてるかと思うとするっと滑って高梨の手が僕の中心を握った。 「うわぁああ、何これ?」 「司が気持ちよくなるためのもの。勿論俺も気持ちいいけど」  ぬるぬるした手が絡みついて来て、意識も何も全部高梨の手に持っていかれそうになる。押さえようと伸ばした手に触れた高梨のものは、もう固くてぐんと上に向いていた。 「あああっ、ちょ、ちょっとっ、司…」  今の上擦った声は高梨のだ。手に当たった高梨のものを思わず握った僕が自分がされたみたいに上下に扱いてみたのだ。  慌てながら出した高梨のいつもと違う声に僕のスイッチも入る。いや、これこれと思う。僕だって高梨をどうこうしたいのだ。どうやっていいのか未知数だけど今のがいいなら続けたい。 「気持ち良い? 高梨、もっとやっていい?」 「う…やってもらいたいのは、やまやまだけど…今日は俺が決めたいからダメ」  艶っぽい声で困ったように言う高梨がやけに可愛い。何、可愛いい。ますます高梨にされた行為を思い出してがんばってみる。 「あああっ、司、すっごっ、気持ちいいっ」  高梨がぐいっと首に手を回して僕にキスしてきて自分のと僕のを手ごと握って揉み扱いた。さっきまでの余裕を吹っ飛ばされて浅く呼吸をしながら喘ぐしかできなくなる。 「好きなやつと……するのってこんなに気持ちがいいんだ。司、ありがとう」  上気した顔でそんなこと言うなんてずるい。  ああ、僕の天使がここで降臨した。うるうると瞳が潤んだ高梨にこんな事言われて僕は、あっさり白旗ならぬ、白濁を飛ばす。 「ずるい、高梨。僕ばっかり……」  吐き出してぐったりした僕に高梨が優しく触れる。 「一回イッたほうがいいんだから。司、そのまま楽にしててよ」  謎の言葉とともに高梨がとんでもないところに指を当てる。 「た、高梨? 何やってんの?」 「今度はここを使うから」 「なっ?」  高梨がにこりと笑う。その顔を見て、視線を高梨の起立したものに移して。思わずベッドから飛び出そうとした。しかしそれを見越したように高梨の両手ががしりと僕の腰を掴む。 「やだ、絶対無理。そんな大きいもの入らない」  僕を引き戻し、抱きしめて高梨が首筋に顔を埋める。 「大きいなんて、嬉しがらせないでくれよ。大丈夫優しくするから、ね? 司、お願い」  ここぞと甘えるように言われると、なんだか嫌と言えなくなってしまう。 「優しく?」 「うんと優しくするから」  お願いと言われると僕は弱い。ああ、今日は流されっぱなしだ。そうは思うけどこれが惚れた弱みってことなのか。怖いのは、怖いけど応えてあげたい。こくりと頷いた僕の手に高梨の手が絡む。互いの指が交互に絡むように組まれて僕の体に高梨の体が重なる。 「司が毎日俺の事見に来て。俺、その時間が一番好きだった。だから、シフトの時間も固定にしてもらっていた。司と恋人同士になれたらってずっと想像していたんだ」  なんて健気なんだ、高梨。 「…そうなの? それにしちゃあ、やり方があくどかったような」 「うん、俺って素直じゃないから」  笑いながら高梨がつないでいた手を外して体を起こすと、腰の下に枕を置く。そしてさっきと同じ液体をとろりと流れるほど僕の中心へと垂らした。 その冷たさとこれからの事にぞくりと僕は震えた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

354人が本棚に入れています
本棚に追加