SCENE3

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 事が終わってしまうと、流は恥ずかしくてたまらなくなった。あんなセックスをしたのは初めてだ。あそこまで激しく、快感が深いのも。 「さっきからずっとうつむいちゃって、どうしたの?」  二人は近所の焼肉店に来ていた。セックスですっきりした後、すきっ腹に焼肉を供給する。ある意味健康的で、欲求に素直すぎる。 「早く食べないと、焦げちゃうよ」  優の声は、いつもより心なしか弾んでいる。それも性欲を満たしたせいだろうと思うと、流はいつになく照れてしまって、空腹なのに箸が進まない。 「三大欲求しっかり満たしたから、今日はきっといい仕事できるよ」 「うわっ!」  言われた流は急に思い出し、思わず大声を上げる。 「なに、どうしちゃったの、いったい?」 「いや、その……」  流は言いよどんだ。予定通りなら、今日は夜の公園だったか遊園地だったか、キスシーンの撮影があるはずなのだ。優とのことを思い出さずにはいられないだろう。うまく切り抜けられるか、自信がない。  流をいぶかしそうに見つめていた優は、焼肉を飲みこむとふいに微笑んだ。 「なんか違うんだよ、流ちゃんさ。なんか違う」  楽しそうに笑いながら首をひねる優。なんか違う、というのはやっぱり、さっきのセックスのことだろう。 「ねえ、気持ちよかったよ、流ちゃん。今日はよかったなあ、ほんと」 「なっ……!」  さらりと屈託なくほめる優に流は絶句し、優のとろけるような笑みに出会うと、あらぬ方を見ながら頭をかいた。
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