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 時々リュックを確認しなければならない程の姿は、ビビりすぎていて恥ずかしくもなる。それでも、何かをしていなければプレッシャーに潰されそうになるのだから仕方がない。  銀行のエアコンは少し強すぎるくらいでは在ったが、ジメジメと暑い外と比べると数倍過ごしやすい空間である。  高校を出て、アルバイトをしながら生活をしていた僕は、些細な事をきっかけにアルバイトを辞める事となった。それから一年無職を続け、ついに貯金の底が見えた時に今の仕事を見つけた。  交通費五千円。面接するだけで五千円と書いてあったと言うそれだけの理由で面接を受け、直ぐに合格となり、気が着けば探偵会社のトップに居る訳だ。そんな無職期間が長く、金の無い僕は百万と言う大金を取られはしないかと、ドキドキしていた。  一秒でも早くこのプレッシャーから解放されたいと、名前が呼ばれる事を今か今かと待ち望んでいる。  アプリを中断しそろそろかと番号を見るも、動いていない。百四十五番。少なくとも十分以上たった筈なのだが、おかしいなと店内を見渡す。人数が減っている事は分かった。  僕に親切に飴玉をくれた心優しいお婆さんは、日の当たらない日陰でウトウトとし始めている為、待たせるなぁと僕は思っていた。 新たに利用客が現れていないのは、平日の昼過ぎだからだろう。そんなものかと、僕は大事に抱きかかえたリュックを覗く。  リュックの中には、百万円が入ったパンパンの封筒とソレを取られまいと無理やり詰め込んだ赤いレインウエアしか入ってはいない。  周りの目を気にしながら、レインウエアをリュックから出し、封筒をビビりながらリュックの中で開く。大金を持つだけでこれ程挙動不審になるとは知らなかった。  南海雫伊助からも無くすなよと言われていたので、熊のぬいぐるみを抱きしめる乙女の様に大事に守っている百万円。  百万円。封筒の中を覗く。アレ、オカシイ。
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