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私が帰宅してから、一番に気にかかっていたのは、とにかく娘の状態です。
抜毛症という言葉くらいしか知識のなかった私ですが、自分でしたくてしたいわけじゃないだろうというくらいは分かっているつもりでした。
もちろん、つもりでしかなかったのは、この後の長い時間で思い知ることになりますが……
ひとまず顔を見ても元気そうで、でも帽子は被ったままの娘をそっと1人部屋へ呼び、ようやく帽子を取ってもらったのを見てたまらず涙が出ました。
本当に、頭頂部の髪の毛がすっかりないのです。
直径にして5センチくらいでしょうか。
まるで削り取られたように皮膚が丸見えの状態は、見るからに異常としか言えず見るたびに悲しくなり、ぎゅっと長く抱きしめました。
責めてはいけない。
でも、どうしてこうなったのか理由は聞かなければ。
どう聞き出せば、りんちゃんを傷つけないだろうか。
動転する気持ちを抑えつつ、ゆっくりゆっくりと、りんちゃんに誤解を与えないように尋ねました。
「学校で何かあったの?」
「ううん。何もないよ」
「じゃあ、いつ抜いちゃったのかな?」
「授業中にね、なんか抜いたら楽しくなっちゃって」
「そっか。でもこんなに抜いちゃったら痛かったね」
そう言いながら結局涙が止まらなくなってしまい、ごめんねと言って抱きしめました。
きっと、こんなに抜いてしまうような何かが起きてしまったのは、私たち親のフォローが足りていなかったのだと、深く反省しました。
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