20年越しのラブレター

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 俺、中谷 尋輝(なかたに ひろき)が、(つむぎ)と再会したのは、高校3年生の3月のことだった。  大学に合格した俺は、入学式用のスーツを仕立てるべく、父に薦められるままテーラー(たち)を訪れた。 俺たちがデザインや生地を選び、採寸しているところへ店主の娘が顔を出した。 「いらっしゃいませ。失礼します。  お父さん、勝手口の方に山内(やまうち)さんが  いらっしゃってるけど」 紬だ! 俺は一目見て分かった。 俺が小学生の頃、可愛がってた女の子。 確か四つ下だったはずだから、今、14歳。 中学2年生のはず。 あの頃、三つ編みのおさげだった髪は、相変わらずのロングヘアではあるが、サラサラストレートのポニーテールになっていた。 あの頃も可愛かったけど、今もかわいいなぁ。 って、間もなく大学生って奴が中学生をそんな目で見るのは犯罪だよな。 そんなことを思いながらも、俺は、食い入るように紬を見ていた。 「どうせまた釣りの話だろ。  今、接客中だから、また連絡するって  言っといてくれるか?」 「うん、分かった。  失礼しました」 紬は、俺たちの方をちらりと見て、ぺこりと頭を下げて奥へと戻っていく。 紬は、俺のことなんて覚えてないんだろうな。 俺は少し寂しく思いながら、奥へと続くモスグリーンの大きな暖簾を眺めていた。
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