20年越しのラブレター

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 俺の通う小学校には、「ふれあい班」と呼ばれる縦割り班の活動があり、紬は俺が班長を務める班の2年生だった。  色白で、でも頬はりんごみたいに赤くて、くりくりの円らな瞳をキラキラさせながら、いつも「ひろくん、ひろくん」と俺を慕ってくれる、とってもかわいい女の子。 紬は、いつもまだ不器用ながら、折り紙で一生懸命折った花や鶴をよく俺にプレゼントしてくれた。  あれは俺が6年生の2月のこと。 最後のふれあい班活動の日、紬はただ四つに折っただけの綺麗なピンクの折り紙をくれた。 これは…? 何の形にも見えなくて、俺が首を傾げると、 「ひろくん、  これ、絶対、おうちに帰るまで開いちゃ  ダメだからね。  約束だよ!」 と紬は真剣な顔で言う。 開いちゃダメってことは、中に何かあるのか。 俺は少し納得して、 「分かった。約束な」 と折り紙をポケットにしまった。  だけど、小学生の俺は、とても家までなんて我慢できなくて、すぐにトイレに行ってその折り紙を開いた。 『ひろくんへ  だいすきです。  大きくなったら、  ひろくんのおよめさんに  してください。         つむぎより』 か、かわいい〜! 俺は、今まで、何人かの女子から告白されたことはあるけど、ラブレターっていうのをもらったのは、これが初めてだった。 初めてのラブレターがこんなにかわいい手紙だなんて。  俺は、だらしないほどニヤニヤしながらトイレを出て教室に戻る。 「尋輝、何1人で笑ってんだよ。  キモっ!」 クラスメイトにそう言われても、俺はニヤニヤを止めることができないくらい、嬉しかったんだ。  俺は、翌日、昇降口のところで紬を捕まえる。 「紬、おいで」 「ひろくん!」 俺が呼ぶと、紬は嬉しそうにちょこまかと駆け寄ってくる。 俺は、紬を手招きして耳元でひそひそと囁く。 「昨日は手紙、ありがとう。  俺、大きくなったら、絶対、紬を迎えに  行くから、待ってろよな」 それを聞いた紬は、花が咲くように満面の笑みを浮かべて、 「うん! ひろくん、約束だよ!」 と言った。
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