待ち合わせ

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待ち合わせ

今日はクリスマス あの人が言ってくれた 「何処か遠くへ…」 無人駅の外に淡く光る2本の街路灯 あの人が言ってくれた 嬉しかった 幸せだった 「何処か遠くへ…」 そんな言葉を信じずっと待っている クスクス もう何時間 もう何回 もう何年 私はクリスマスにここに来て ずっと待っている 何度悲しい気持ち 何度来ないことを この心に焼きつければ納得するんだろう 今年も来てしまった 「待ち合わせ」 来るはずもない待ち合わせ ふと 足元に影が… 横を見ればそこにいたのは どっさりと雪を被った赤い傘を私にさしかけている 「君、毎年、毎年、ここに来るね。僕もさ」 知らない男性はそう言って黙って私の隣に居た 「また…」 「また…来年…」 その人は一瞬黙り 「また…来年、悲しい思いをしたくない。 僕も、そして君も….旅立つ準備は出来ている。 このまま悲しみを捨てて他の地へ一緒に…」 その人は私の手を取り 私もその手を握り 街路灯を抜け そのまま列車に乗り込んだ さぁ… 「待ち合わせ」は済んだ 長かった 凄く長かった お互いに信じた「愛しい人、信じた人」ではないけど やっと「出発」出来た そんな「出発」のクリスマス
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