深紅のゼラニウム

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■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫ 放課後、やっぱり3人で手を繋いで歩いていた。 通る人が皆振り返る……当たり前だ。 「なぁ侑李、ちょっと喉乾いたよな。あそこでジュース買おうぜ」 と亮蔵が僕の手を引けば。 「だめ! さっさと家帰んなきゃ」 と逆方向に引っ張る侑花。 僕は見事にその中央で困っているわけで。これがさらに注目を集める。 (2人ともやめて、ほんとに……) よく見たら2人ともすごく顔怖いし。特に侑花が、亮蔵の事を凄い目で睨んでる。 (侑花があんな顔するなんて) いつも明るく穏やかな彼女なのに。奥歯を食いしばっているみたいだ。 それを口角上げて面白そうに眺めながらの彼だって眉間に入ったシワは心中穏やかじゃないだろう。 ここで何か言って止めれば良いのだろうけど、僕はやはり声が出せない。2人の顔を交互に見て『やめてくれよ』と表情で訴えるしかないのがなんだか情けない。 「あのさぁ。前から気になってたけど、ちょっと侑花って過保護なんじゃねぇのかな?」 亮蔵が放った言葉に、彼女がこめかみをピクリと反応させる。 (やばい。これ、怒ってる) 滅多に見ない、ガチギレ寸前の顔だ。 「は? 過保護? 誰がよ。あたしは姉! 双子のね。心配するのは普通でしょうがよ」 「……だからって勝手に決めて良いワケねぇよな」 亮蔵は、喧嘩ふっかけてわざと怒らせていると言うより真剣に諭そうとしているらしい。 いつもの笑顔以外の表情をする2人に、僕はただ両親の喧嘩を見る子供のような顔をしていたと思う。 「別に勝手に決めた訳じゃ……」 「侑花が心配するのは分かるけど、毎日手を繋いで登下校とかはやりすぎだぜ。シスコン扱いされるのはこいつだろ」 すると彼女は肩を大きく竦めて。 「人の事を言える立場ぁ?」 と顎で僕と彼の繋いだ手を示す。 彼は一瞬フリーズしたように固まって、小さな声で呟きながらゆっくり手の力を抜いた。 僕の体温から引き離されるように。彼の指が掌が剥がれる。 「それはその……と、友達」 ―――その瞬間。 侑花は僕と繋がった右手を強く引き寄せた。そして一言叫ぶと、信じられない強引さで駆け出したのだ。 「……行くよッ!」 「!!」 バランスを崩さなかっただけ奇跡か。まろびでるように足を踏み出してよろけながら踏みとどまる。 しかしそのまま止まってくれる様子はない。 「お、おいッ!」 猛然と走り出した彼女に僕は引き摺られるように、その場を去らざるえなかった。 背中に亮蔵の大きな声が響きぶつかるが、侑花はお構い無しで全速力。 僕は当然待ってとも言えず。 ひたすら無言のまま息だけ切らせて、離された片手を妙に寒々しく想い走った。
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