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―――その公園は、手入れが全くされていない為かひどく草が伸びている。
特に公園をぐるりと囲む木々はボサボサと生い茂り、太陽の光を遮っているかのようだ。
子供の秘密基地等には持ってこいらしいが、見通しが悪く雰囲気が良くないと大人たちに利用を禁止されているのを見たことがある。
実際、この前中学生の男女がそこでキスしたとかしないとか。そんなことをクラスメイトが騒いでいたのを思い出した。
「……お前、炭酸とか飲めるのか」
僕はコーラ、彼はりんごジュース。
なんだか意外だ。どうやら彼は炭酸が飲めないらしい。
「俺さ。あの舌にシュワって来るやつが痛くてよぉ」
眉間と鼻の頭にシワを寄せて、すごく面白い顔をするものだから。
「ふふっ……」
僕は思わず笑ってしまう。すると。
「あ」
すごく間抜けな声と顔をした亮蔵が目の前にいた。
(え、笑ったら駄目だった?)
ごめんって言うべきか(言えないけど)迷っていると、次の瞬間彼がすごい力で僕の両肩を掴んだ。
(い、痛っ……)
「かっ!」
(か?)
なんだ。すごく怖いんだけど。あと近い。そして痛い。
ギリギリと掴まれた肩が痛くて悲鳴上げそうだ。
(なんか僕悪いことした!?)
いい加減やめろと蹴りあげた方がいいか迷った時だった。
「かっ!……こいい、声。だな」
(は?)
彼は我に返ったような顔をしながら僕から目を逸らして言った。
「ごめん、あんまりにもその。侑李の声、初めて聞いて……か、かっこいい声だな、と」
(かっこいい声、初めて言われたな)
まだ声変わりしきってなくて、亮蔵の方がよっぽどいい声だと思うけど。
それでもまぁ。
『ありがと』
ノート出してそう書いて見せる。貰ったノート、一応使わないとね。
「お、おぅ。ごめんな。痛かっただろ」
つい驚いて……と変な言い訳されたけど、驚いたのは多分僕の方だ。まぁ良いけどさ。
(やっぱり変なやつだなぁ)
そう独りごちながら、僕は炭酸を1口すすった。
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