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彼の書く内容だって、大体が他愛のない事だ。
交換日記ってそういうものだって言われたらそうだし、少し面倒だが暇つぶしくらいにはなる。
……彼の綺麗とは言えない文字を追っていると、僕はあることに気がついた。
(亮蔵、また宿題したって書いてない。今日もどうせしてないだろうから、明日見せてやろう)
彼の日記には『なんと今日は宿題をした』という記述が極たまにある。
裏を返せば、その日以外は宿題をしていないという事だ。そして本当にしていなかったりする。
休み時間、コメツキバッタのように頭を下げる彼に仕方なく見せてやったり手伝ってやったりするのだが、なんか最近それが習慣になりつつある。
決して不真面目とか勉強出来ないわけじゃあないのに、彼は宿題をしてこない。
(ま、僕も復習になるからいいけど)
あと普段世話になってるというのもあるし『ありがと』と口にする亮蔵の笑顔は見ていて、なんていうか……心が温かくなるというか……とにかく悪い気はしない。
「なんか侑李、嬉しそうじゃん。いい事あった?」
「えっ!?」
突然侑花に顔を覗き込まれて、反射的に手で顔を覆い隠すがもう遅い。
何故か分かんないけど、僕の顔は真っ赤に染まっていたのが鏡なんか見なくてもその籠る熱で分かったからだ。
「侑李?」
「べ、別に何も無いよっ……」
怪訝そうな彼女の目を誤魔化すように、僕はノートやペンケースなどを持って自室に逃げ込んだ。
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