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01
「ああ、お腹がすいた」
彼はずっと私に空腹をうったえている。
横にいる彼は、ずっと私の目を見ながらただ口を開いて懇願していた。
「もうずっと何も食べていないんだ、食べさせてくれ。お願いだ、食べないと死んじゃうよ」
食べ物なら目の前にあるじゃない。
それを食べれば良いのよ。 それ以外は必要ないでしょ。あら、食べないのね。 だったら、もう少し空腹でいてもらわなくっちゃ。
だから私は「お腹が空いた。食べたい」と言う彼に、優しく言い聞かせ続けるのだ。
「だめ」
そして。
「だったら待って」
こんな風に。
「もっと」
時間をはかりながら。
「もっと我慢してみて」
彼の顔色を観察しながら。
そうすれば喜んで目の前の料理を料理を食べてくれるはず。
そして、どれくらいか分からないけれど、やがて十分な時間が過ぎた。
私は彼に「もうそろそろ食べたくなったでしょ?」と、聞いたけれど彼はまったく反応を返さなかった。
首を傾げて私は独りごちる。
「おかしいわね、空腹は最大の調味料だって言っていたのに」
目の前で強烈な異臭を放つ料理と彼を見ながら、私はひたすら首を傾げ続けるのだった。
「初めてだからうまく作れなかったかもしれないわね。待っててもう一度作ってみるから」
私は再び、台所に散らかった調理道具を手に取った。
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