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「...あれだけ大きな看板を描いてもらうほどの予算は無いが、、、近いうちにうちの店の小さな看板にも何か描いてもらおうかな?、、、君のところの親方に話してみるよ!トーレ君をご指名でな!」
ルッジエロはそう言うとトーレの肩を大きな手のひらでポンと叩くと、料理の下ごしらえをするために厨房に戻っていった。
「ありがとうございます!ルッジエロさん!」
トーレは自分の描いた看板を、またも人に褒めてもらえて心が高揚してきた。
(なんだか今日はついているな!...これは、もしかしたら、いい流れになるかもしれない)
トーレの心は10時からのキャサリーンとの打ち合わせにいろいろと想像をめぐらし始めた。
「〇×△※...あの、トーレさん?...」
ふと気が付くと目の前にアンゲラがモップを持って立っていた。
何かトーレに話かけたらしい。
「え?!...あ、アンゲラ?何か言った?」
「...あの、トーレさん。ちょっと差し出がましいことかもしれませんけど...その花束の花の色の組み合わせって、お店の改装祝いというよりは...何か、女の子にプレゼントとして渡すような色の組み合わせだと思うんですけど?...」
「え?!そうなのかい?」
トーレはちょっとびっくりし、かつ、花屋の店主のロジーナに見透かされたことに気が付き、顔を少々赤く染めた。
「...実は、この花束は朝市の花屋のロジーナさんに全て見繕って作ってもらったんだ...」
トーレのその返答を聞き、アンゲラは__
「...あ、そうだったんですね。じゃあ、そういうことなんですね。わかりました...」
と返すと、ちょっと俯き加減となり、またトーレから離れ、店の木の床をモップで拭き始めた。
トーレはそんなアンゲラの様子を見て、
(...あれ?何だか気を悪くしたのかな?)
と思ったが、心の半分はまたも10時からの打ち合わせに飛んでいた。
___と、そのときトーレは窓際の左端においてある無色の小さなガラスの小瓶に黄色い花が二輪さしてあることに気が付いた。
野に咲いていた花のようで、花の形は不揃いだが、野趣あふれる美しさがあった。
(ふーん。二輪だけだけど、綺麗な花だな...アンゲラが持ってきたのかな?)
トーレが花を良く見ようと顔を近づけると___突然、二輪の花の影から小さな透明感のある白い小人が顔を覗かせたのであった!
「えっ?!」
トーレはびっくり仰天して、思わず後ろに体を引きながらも、その小人に目をやった。
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