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その2
俺……ピーマン……。
子供に大人気……。
……。
……。
って、誰も突っ込まねぇから自分で言うけどよぉ……。
な訳ねぇじゃん!
俺が何年『子供が嫌いな食べ物ランキング』の上位に居座ってると思ってんだよ!
嫌いとかそんなレベルじゃなくて、見ただけで泣き出す子供も居るんだぜ? 酷くねぇか?
大体、嫌いな理由が分かんねぇよ! 旨いだろ俺?
アルミホイルに丸ごと包んで焼いて、醤油と鰹節なんか掛けたらご飯も酒が止まんねぇと思うんだけどな。
それに栄養だってすんげぇあるんだぞ。
それも『ビタミン』なんてありふれた名前のもんじゃなくて『β‐カロテン』だぞ『べーたかろてん!』
名前の響きだけでも何か格好いいだろ?
食べたら格好良くなれそうな気になってくるだろ?
なのに何でなんだよ……。
まぁ、愚痴ばっかり言ってても始まらないから、新しく考えた作戦でも実行するか。
よし、行くぞ!
変身! とう!
「こんにちは~、僕ハンバーグだよ、悪いピーマンじゃないよ」
どうだこの変装、完璧だろ。
本当は生のまま丸ごと口に飛び込んでやりたいんだが、トラウマになっても困るからな。
こうやって子供が好きなミンチ肉に隠れて……って。
おい! ちょ! 止めろ、何する気なんだよ!
ひっくり返そうとするなよ、俺が見えちゃうだろうが!
お、おのれ……返されてたまるか!
あ~もう! 疑り深い奴だな、裏なんか見ないで、肉だけ見てサッサと口に入れろよ!
って、うわ! 最悪だ!
俺を剥がして肉だけ食べやがった!
何なんだよそれ……。
……。
……。
クソ……。
変なプライドで俺の姿を残そうとしたのが失敗だったか……。
よし! じゃあ次は完全に俺だって分からなくしてやる。
いくぞ!
「ねこえも~ん、僕の姿を見えなくしてよ~」
「しょうがないな~ピーマンくんは」
パパパパッパパ~♪
「ピ~ラ~フ~!」
どうだ、今度こそ完璧だろ。
米粒と見間違うくらい細かくなってやったからな。
これなら周りのコーンやハムの方が大きいし目立たねぇだろ。
ふっふっふ……。
どうだ、掬った匙にはもう十個は俺が乗ってるぜ、これなら……。
って、おい! ピンセットなんか持ちだして何考えてやがる!
それは食事には必要ねぇだろ!
うわ! 信じられねぇ!
そんなもんでチマチマチマチマ面倒臭い事するくらいだったら諦めて食べろよな!
何なんだよその執念は?
大体こんなに細かかったらもう味も匂いもしねぇだろ?
何が嫌なんだ? 色か? 緑が嫌なのか?
だったらこれからはキウイもマスカットもメロンも食べるなよ!
じゃなきゃ『緑差別』で訴えるぞ!
……。
……。
ふぅ~……。
分かった……。
もう分かった……。
色も味も残さなきゃいいんだな? そうなんだな?
じゃあこれだ。
「プ〇キュ〇、プリンセスエンゲージ! 染み渡る醤油の香り! キュア佃煮!」
決まった……。
自分の才能が恐ろしいくらい決まった……。
ハッキリ言ってこれだったら見た目も全部茶色で同じだし、味も砂糖醤油の味で同じだからな。
しかも俺だけじゃなくて他の奴も混ぜちまったら……。
ほら、どうだ! もう昆布なのか俺なのか分かんねぇだろ!
よしよし、箸で摘まんでもまだ気が付いてねぇな……。
いいぞいいぞ、ご飯と一緒に口ん中に……。
……。
……。
よっしゃ~! 噛んでも吐き出す気配は微塵もねぇ!
噛まれてる噛まれてる……なんて心地いいんだ。
あ~……これが食べられるって感覚なのか……。
食べ物としての幸せが全身に染み込んでくるぜ……。
ははは……子供に笑って食べられるっていいな……。
でも……。
今度は甘い苺に生まれ変わりてぇな……。
……。
……。
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