なやましいらぶれたー

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なやましいらぶれたー

 文字が読めて、書けるようになってきた娘がたくさん手紙をくれる。  便箋やおりがみを使うだけでなく、その辺にある紙切れなどにも短い文章をしたためてうれしそうに渡してくれる。  さてこれを私はどうしたらいいのだろうか。  どうしても捨てることができず、ひとまず全部とっているのだが、それはもうすごい数になっている。  ある日、お菓子の袋にメッセージ欄を見つけたときには、大きな瞳をきらきらさせて、油性ペンを要求し、そして書きにくそうに一生懸命書いてくれた。  そしていま、手元に個包装のチョコレート菓子が二つある。  裏にはメッセージが書かれている。  そこにはこうあった。 「おかあさんすきたべて」  お母さん、好き。食べて。  そう書いてくれたらしい。  嬉しい。  そしてもう一つにはこう書いてある。 「わらきすてがるとろこ」  ……ごめん。解読不能だ。  本人に聞いてみた。 「わらてるところがすき」  笑ってるところが好き!  なんとも難解なお手紙だ。  だけど、解けてみるとこれがまたとんでもなく嬉しい。  実はこの二つをもらったのはもう半年以上前……いや、一年くらい経ったかも知れない。それくらい前なのだ。  それを見るたび、娘は早く食べないとチョコレート溶けちゃうよ!  と教えてくれるのだが、私にはどうしてもこの包装が開けられない。破れない。このお手紙をそのまま維持したいと思ってしまう。  食べられなくてもいい。  ずっとこのまま残しておきたい。  ……とりあえず、今はまだ。今のところは。  こうして私の引き出しはいっぱいになっていく。  いろんな意味で、悩ましいお手紙がたくさん溜まっていく。 (さすがにチョコのお手紙は冷蔵庫に保管してあるが)  保管場所に困るなぁとも思う。  だけどもっと欲しいとも思う。  さぁ、いつまでくれるのかな。  ずっとずっと、くれたらいいなと心から願う。
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