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事件のはじまり
その先にあったのは、一つの民家だった。
一階建てのその平屋はこののどかな風景によく合っている。少女はその家の扉の前まで来て、ようやくその足を止めた。はぁ、はぁ、はぁ、と息を整える。
「あら!」
ちょうどその時、エプロンを着た白い髪の老婆が門からやってきて、声をあげた。
老婆は手に買い物袋を持ったまま、金髪の少女に駆け寄る。…
「リズじゃない!元気だった?」
少女は、不意に後ろから声をかけられたことに驚いたが、声の主の顔を見ると、ぱぁっと顔を輝かせて、言った。
「おばあちゃんこそ!……ふんふん、人参とじゃがいもと糸こんにゃく…さては、今日の晩御飯は肉じゃがですな?」
その少女__リズは、そう言って花のような笑顔でふふん、と笑ってみせる。
老婆はそれを見て、また微笑んだ。
「正解!」
「やったぁ~っ!」
「ふふ、」
飛び跳ねて喜ぶリズを見てまた、老婆は思わず笑ってしまっていた。
「最近、大学はどうなの?」
老婆__リズの祖母がそう問いかけると、リズはまたにっこりと笑う。
「もー毎日楽しすぎるよ!この間教授とまた新しいゲームをやったんだけどさぁ、あいつ何回死んだと思う?なんと1時間で52回だよ!?ほぼ1分に一回くらい死んでるよね!?」
「あらあら。」
祖母はそう言いながら笑う。……ふと、何かを思い出したような顔をしたのを、リズは見逃さなかった。
「………………。」
無言で問いかける目線になったリズに、祖母は素直に降参した。
「教授で思い出したんだけどね、」
「教授が、どうしたの?」
祖母は、すこし考えた後に首を振って言った。
「いやね、この辺でどこかの教授が行方不明になったって聞いたんだけど……多分、リズのいう教授じゃぁないわね。」
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