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プロローグ
風が吹き、木々が騒めく。小鳥がさえずる。
みいん、みいんと鳴くセミの声が、そんな騒めきへ溶け込んでいく。
どこか気だるげな陽が、木の間から降り注ぐ。気づいたリスが顔を上げて、また赤い木の実を食べ始める。
ト、ト、ト、ト、ト……
そんな『音』たちの中に、軽快な足音が響いた。
靡く金髪の長い髪、リズミカルな足運びと共に聞こえる規則正しい息遣い。燃えるような深紅の瞳は輝き、ただ一点を目指して走る。
ト、ト、ト、ト、ト……
走り続けていると、不意に道が開いた。
一面の田畑の中に、ぽつ、ぽつと民家が見える。
空気が美味くて、規則正しい息遣いはどこか高揚感を含んでいた。
二手に別れた道を迷い無く左側に、その次は右に進んでいった。心なしか、深紅の瞳は更に光を増しているように思える。足を運ぶペースもいつのまにか早くなっていた。
階段を駆け上がり、門をくぐっていく……
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