3人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
私の手には一通の手紙がある。
優しかった義理の母が、私にと最後に託したそれを私は庭で燃やした。
たぶんそれが義母の望みだったろうと思う。
私もこの家を出ようと決め、立ち上る煙を見上げた。
義母が亡くなり、義父が独り残された。
義母はよくできた人だった。と誰もが口を揃えて言う。
ろくでなしの夫によく耐え、よく仕え。
でも、ガンが発見された時には、もう手の施しようがない状態だった。
入院して間もなく、あっさりと亡くなってしまった。74歳。まだまだ早い。
最後まで義父の心配をし、ろくに見舞いにも来ない不肖の息子を私に詫びた。
義父とその息子である私の夫は、揃いも揃ってろくでなしだった。
特に義父は飲むと暴力を振るい、ギャンブルに狂い、怪しげな商売に手を出しては借金を重ねていた。
そして最悪なのは、女だ。
夫の話では、物心ついた頃にはほとんど家にも帰らず、たまに戻ると飲んで暴れ、義母が内職やパートで細々と貯めた金を奪い取って行ったのだそうだ。
家を訪れるのは借金取りと、ごくまれに義父の愛人だと名乗る女。
つき合っている頃、そうした過去を辛そうに話す夫に、私は同情し自分が彼を支えて暖かい家庭を築こうと誓った。
だが、夫も父親そっくりのろくでなしだった。
唯一の救いは、父親と違って暴力を振るわないことだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!