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SNS告白が流行っているが、俺はあえてペンをとった。
ありったけの思いを便せんに込めた。
相手は、笑顔がまぶしい黒柳さん。
苗字が某タレントと被っているのは偶然だ。
俺は内心ドキドキしていたが、どうにか平静を装って渡した。
「ありがと! わたし、手紙、大好きなのっ!!」
黒柳さんはとびきりの笑顔を見せてくれた。
「俺が言うのもなんだけど、古風だね」
「だよねー。かといってメールは味気ないし」
俺と黒柳さんは話が合うみたいだ。
が、それ以上盛り上がることもなく、この日はこれで別れた。
俺、話下手か!
次の日、黒柳さんに呼び出された。
「あの手紙、すごく美味しかったよ!」
開口一番、意味不明。
「とっても熱くて、コクがあって、キレはないんだけど、マッタリしていて、決してなめらかじゃないんだけどー」
「ちょっと何言ってるのかわからない」
黒柳さんの話に俺はついていけない。
「あっ、ごめんね」
ハッと我に返り、黒柳さんはカバンから何かを取り出した。
「これ、わたしから」
「あ、どうも」
反射的に俺は受け取った。
それは手紙。
「読む前に食べちゃったの。ほんと、ごめん。でも美味しかったのは本当だから」
黒柳さんは笑顔ながら両手を合わせて俺を拝んだ。
つーか、手紙食べるなんて、ヤギじゃあるまいし。
「わたしのも食べてみて」
キラキラ笑顔の黒柳さん。
「いや、普通に腹壊すから」
首を横に振る俺。
それにこの手紙、ごく普通の紙製品だろ? インクも水性じゃん。完璧に文房具だろ。
しかし、気づいたら俺も手紙を食べていた。
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