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「立花君が、好きなんだ。俺でよければ……君の番になりたい」
「……でも、僕はまた、涼風さんに迷惑をかける」
「いくらだってかけていい。今は立花君の本当の気持ちが聞きたい」
決意を灯した揺るぎのない言葉を、立花は信じる。
もうこれ以上涼風にも、自分の気持ちにも嘘を吐かなくていいのだと知ると、どう名付けていいのかも分からない初めての感情が、次々と生まれてくる。
痩せた身体の中に閉じ込めておくのは到底無理で、じっとしているとそのうち膨らみきって、破裂してしまうのではないかと怖くなった。
誰もいない車内で、立花は「好きだ」と叫んだ。
ありったけの言葉を吐き出しても、全然楽になんかならない。
ああ、きっとこれが、大切な人を思うときの愛しいという名前の感情なのだ。
停車して立花以外の客が乗り合わせても、叫ぶように泣いていた。
人目を憚らず、ただ大声を上げて泣いた。
× × ×
涼風の部屋へ来たのは2度目だ。
とは言っても、あのときの立花は泥酔していて、涼風の部屋を初めて訪れたときの感想は忘れてしまっている。
涼風の匂いがたっぷりと溶け込んだ部屋で、まだ靴すら脱いでいないのに2人で抱き合っていた。
疲労感の染みついた足は、もう限界だった。よくここまで堪えてくれたと思う。
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