* Scent.6 *

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「違うんですっ……。そのままの意味なんです!」 「……え? ああ……そうだよね」 涼風は1人納得したように頷いてみせる。 ぎこちない間に違和感を覚えて、さっきの台詞を取り消したくなった。 半身浸かれるくらいの湯を浴槽に張ったところで、立花はお姫様みたいに頭から爪先まで綺麗に磨かれた。 風呂場から上がるときもふらふらして危なっかしいから、涼風が抱きかかえてベッドまで移動させた。 ──もう薬は抜けているはずなのに。 逆上せているだけかもしれないが、それにしても脈が速い気がするし、呼吸も荒いままでなかなか戻らない。 よく似た現象は知っている。でもそれは1ヶ月先の話で……。 「……ん、んっ……ん。ふっ、あ……」 体力の残っていない立花は無抵抗だった。 柔らかなベッドに押しつけられて、何度も角度を変えながらキスをする。 立花がキスの合間に切なげな嬌声を漏らすと、涼風は唇を離してばつの悪そうな顔をした。 ──もっと涼風さんに触れたい。 キス以上のことももっとしたい。 立花は涼風の意思を確かめるように、遠慮がちに腕を掴む。 男らしい喉の形が一瞬引っ込んで、涼風は息を飲んだ。
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